一目見るだけで、ついフラフラと引き寄せられる。そんな不思議な魅力のある古民家カフェが、少しずつ増えてきています。東京・大田区の池上本門寺の近くにある「古民家カフェ 蓮月」も、訪れる人を優しく癒やしてくれる古民家カフェです。その佇まいから、さまざまなドラマや映画のロケ地としても使用されている、味のあるカフェなんです。
昭和初期に建てられた日本家屋のリノベカフェ
「古民家カフェ 蓮月」は、東急池上線の池上駅から徒歩約10分の場所にあります。昭和8年に建てられた「蓮月庵」という蕎麦屋を2014年にリノベーションしたカフェで、「第1回大田区景観まちづくり賞」を受賞しています。
一歩店内に入ると、そこには昭和の世界が広がっていました。非日常的なステキな空間です。
まずチェックしたいのは、入り口の上に飾られている蓮月庵創業当時のお品書き。なんと、金額の単位が「銭」と書かれています。その左にある額縁は、二代目のお品書きです。下段の右から7番目には、「やみ夜そば」というメニューが。
「蓮月庵の先代によると、月見そばはそばの上に卵が乗っていますが、やみ夜そばはそばの下に卵があったんだそうです」というのは、店主の輪島基史さん。今はもう食べられないのが本当に惜しい……!
入り口横には、風情を感じるテーブル席がひとつ。段差を上がり、カウンターとテーブル席、ソファ席、テラス席の順に奥へ続きます。
カウンター席の反対側にある2人テーブルの横には、蓮月庵時代に使っていた金庫が隠れていました。
重厚感たっぷりの扉を開くと、「廣榮屋(ひろえいや)」と書かれた扉が。「昭和初期は『廣榮屋』という名前でしたが、60年ほど前に先代になってからは『蓮月庵』と名乗るようになりました」(輪島さん)
店内を突っ切って庭に出ると、10席ほどのテラス席があります。これらは密を避けるために、コロナ禍に入ってから庭を整備して席数を増やしました。天気のいい日はすぐに埋まってしまう人気席だといいます。
続いては2階へ。旅籠や宴会場として使われていたこともあるというお座席は、圧巻の広さです。
い草のいい香りが、疲れた心も体も癒やしてくれます。
「当店は、他のお客様にご迷惑がかからなければ、それぞれ自由に過ごしていただこうという方針です。読書をしたり、パソコンで仕事をするのはもちろん、たまに、うたた寝をしている方もいらっしゃいます。つい寝入ってしまうくらい居心地がいいのだろうと思うと、うれしくなりますね」(同)
ゆっくりのんびり過ごすのもいいですが、懐かしさを感じるスポットを見て回るのも乙なもの。他のお客さんのご迷惑にならないように気を付けながら発見した、昭和のアイテムたちです。
今となっては、見ることができないものばかり。「停電したら、この常備灯を使ってたのかな?」などと妄想欲が刺激されます。
レトロなイラストが光る秋田のご当地サイダー
今回は定番メニューの「ドライカレー」にしました。ターメリックライスにトマトの効いたひき肉と野菜のドライカレーを乗せ、その上にフライドオニオンをふりかけ、さらにマッシュポテトが乗っています。
ドライカレーはややスパイスが効いていますが、全体的には老若男女を問わず食べられる優しい味。カリカリのフライドオニオンの食感も楽しい! 副菜のニンジンラペはさっぱりしていて、お口直しになります。
ドリンクは、レトロなイラストがかわいい「ニテコりんごサイダー(瓶)」にしました。ニテコサイダーとは、約100年の歴史を持つ秋田のご当地サイダーです。水にこだわったサイダーで、アジア最大級の食の展示会である「FOODEX JAPAN2019」内で行われた「ご当地ドリンクグランプリ」で銀賞を受賞しました。
今回選んだ「ニテコりんごサイダー(瓶)」は、りんごのやさしい甘さとスッキリ感のバランスがいい1本。もちろん、飲み口はさわやか。口の中で大きめの気泡が弾けるのも、どこか昭和っぽさを感じます。
ロケ地としても愛され、訪れるファンも
実は、たびたびドラマや映画のロケ地として使われている「古民家カフェ 蓮月」。ドラマでは『セミオトコ』(テレビ朝日系)、『メンタル強め美女白川さん』(テレビ東京系)、『ふるカフェ系 ハルさんの休日』(NHK Eテレ)、『未満警察』(日本テレビ系)など。2016年の映画『ふきげんな過去』では、主人公の住む家として使われました。
そして、2019年に放送された『セミオトコ』の終了後には、ドラマをオマージュした「セミーオ」というドリンクも発売されました。今でもこのドリンクを求めて訪れるお客さんがいるそうです。
池上本門寺を訪れたついでに、喧騒から離れて落ち着きたい、ドラマのロケ地に行ってみたい、とりあえずボーっと過ごしたいなど、目的のある人もない人も優しく迎えてくれる「古民家カフェ 蓮月」で、のんびりとした自由時間を過ごしてみませんか?