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長谷十三「言わぬが花、をあえて言う。」

DHC吉田会長が保守系テレビ局を設立するという「期待」が強まっている理由

文=長谷十三
DHC吉田会長が保守系テレビ局を設立するという「期待」が強まっている理由の画像1
DHCテレビのHPより

「国内の保守の精神的支柱だった安倍晋三氏が亡くなってしまったことで、百田尚樹氏や有本香氏などいわゆる“安倍応援団”の影響力にも陰りが出ている。この状況を危惧した吉田氏が新しいネットテレビ局や政治団体を開設するのではないかという見方が広まっています。なにせ一部では3000億円なんて報道されているように、カネは腐るほどあるでしょうから」(政治部記者)

 今、永田町ではこんな「噂」が流れている。ここで登場する「吉田氏」とは化粧品通販や健康食品の大手DHCの創業者で代表取締役会長を務める吉田嘉明氏だ。先日、事業承継目的のM&A(合併・買収)では過去最大規模の3000億円でオリックスに株式譲渡をして退任するというニュースが流れて、世間を騒がした人物だ。

「吉田会長は1972年に大学の研究室を相手に翻訳を行う大学翻訳センターという会社を立ち上げてから、化粧品や健康食品だけではなく、ビール事業、リゾート事業、ペット事業、教育、介護や出版まで手がける巨大企業に一代で成長させたカリスマです。一方で、非上場企業ということもあって公の場に出ることはほとんどなく、これまでメディアに顔写真が掲載されたこともほとんどない、というかなりミステリアスな人物として知られています」(DHC関係者)

 そんな吉田氏だが、実はネットやSNSの世界では辣腕経営者としてではなく「保守のパトロン」というイメージのほうが強い。沖縄の基地反対運動に関する報道や在日韓国人へのヘイトにつながりかねない報道をしたとしてたびたび「炎上」を起こしたネット配信番組『真相深入り!虎ノ門ニュース』『ニュース女子』を制作・放映していた「DHCテレビ」の生みの親だからである。

 DHCの100%子会社であるDHCテレビジョンは、第二次安倍政権スタート直後の2015年にCSチャンネルで放映が始まったが、やがてネット配信へと変わっていく。代表的な番組である『虎ノ門ニュース』はコメンテーターがいわゆる「保守論壇」で占められ、百田氏、有本氏、ケント・ギルバート氏、竹田恒泰氏という「安倍応援団」が勢揃いということで、彼らの「信者」獲得にも大きく貢献した。

 実はこのDHCテレビ、吉田会長が肝煎りで始めたといわれている。目的は吉田会長が支持する安倍元首相の「応援」だ。番組で保守系論壇を多く出演させたのもそのためだといわれており、実際、18年には安倍氏本人まで出演して話題になった。同氏が亡くなった後は「安倍晋三元総理への手向けの言葉」という10時間にも及ぶ映像を3本も制作している。

 しかし、そんな「安倍応援団」のプラットフォームが消滅の危機に晒されている。11月18日、7年8カ月続いた『虎ノ門ニュース』が終わってしまったのである。これはもちろん、オリックス買収の影響であることはいうまでもない。今のところ、DHCテレビまで解体されるという発表はない。しかし、完全に経営を握った際にオリックスは、これまで放送倫理・番組向上機構(BPO)などでも問題になって、大きな収益を生み出すとも思えないDHCテレビを存続させるとは考えにくい。

吉田会長の「思想」

 そこで今、願望も含めて囁かれているのが、「DHCテレビのようなことを吉田会長が続けるのではないか」ということだ。そう囁かれるのは、吉田会長の「思想」だ。

「実は吉田会長は、日本社会は在日コリアンに支配されているということを一貫して主張しています。そして、注目すべきはその主張というのが年を追うごとにより過激になり、そして既存のマスコミへの批判色が強くなっているということです」(DHC関係者)

 確かに、16年に吉田会長は、DHCのホームページで在日コリアンについて言及をしているが、この時は「偽物」「似非日本人」などの表現にとどまっている。だが18年に産経新聞に掲載された手記では、「マスコミの朝鮮化」「一見性別不能の左翼芸能人」など表現が強くなり、さらに「大企業の創業者の大半は在日コリアンが帰化した」など、かなり独特な主張となってきている。そして、20年11月にはDHCホームページ上にこんな記事を掲載して「炎上」したのは記憶に新しい。

「サントリーのCMに起用されているタレントはどういうわけかほぼ全員がコリアン系の日本人です。そのためネットではチョントリーと揶揄されているようです」

 さらにこの文章が批判されたことを受けて、21年4月にはNHKにも批判の矛先を向けて、DHCホームページに「幹部・アナウンサー・社員のほとんどがコリアン系」「日本の敵です。不要です。つぶしましょう」という文章をアップした。

「16年と比べると明らかに批判のトーンが強まっています。それだけご本人のなかで“日本は在日コリアンに乗っ取られてしまう”という危機感が高まっているのでしょう。そういう人が株式売却で3000億円もの富を手にすれば、在日コリアンや既存マスコミに対抗するために何かしらアクションに出るというのは自然の流れではないでしょうか」(DHC関係者)

 そこでまず考えられるのは、『虎ノ門ニュース』の復活だ。番組のフォーマットもあるし、出演陣やスタッフをごそっと吉田氏が立ち上げる新会社に移籍させてリニューアルスタートをさせるというかたちも考えられる。

政治や言論活動が自由にできる

 さらに永田町が注視するのは新政党の立ち上げだ。吉田会長はかつて、みんなの党代表だった渡辺喜美氏に8億円を貸しつけていたことが発覚して注目を集めた。その際に、DHCホームページにこんなメッセージを寄せていた。

「私たち企業人はもう傍観しているだけではだめだと思います。政治家の中にも、若手の官僚の中にもこの国を真剣に憂慮している人たちはいます。こういう人たちを私たちは支援していきましょう。平成の坂本竜馬が誕生する手助けをしましょう」

 これまでDHCテレビや吉田氏が在日コリアンを攻撃すると、韓国でDHCの不買運動が起きて撤退に追い込まれるなど、事業に悪影響があった。また、番組出演者が中国企業と関係のある政治家を「親中」などと叩くと、中国市場でかなり稼いでいるDHCへの“ブーメラン”にもなっていた。DHCと関係がなくなれば、吉田氏はこのような“しがらみ”もなくなるので、かなり自由に政治や言論活動ができる、という見方もある。

「DHC会長」という社会的責任のある立場から「ただのビリオネア」になる吉田氏は、「新時代の安倍晋三」を生み出す政界のフィクサーとなるのか、それとも百田氏ら保守論壇のプラットフォームを再びつくるのか。注目したい。

(文=長谷十三)

長谷十三

長谷十三

フリーライター。政治・経済・企業・社会・メディアなど幅広い分野において取材・執筆活動を展開。

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