スカイマークを潰した国交省
そもそも今回のスカイマークの経営破綻劇は、過大投資がたたったものだ。そこで同社がJALと提携してコードシェア(共同運航)などをテコに売り上げを確保して危機を乗り越えようとしたところ、太田国交相が「第3極の存続」という大義名分を持ち出して、待ったをかけた。このため再建のメドが立たなくなり、資金繰りの道を閉ざされたスカイマークは民事再生法の適用申請に踏み切らざるを得なかった。これが破綻劇の真相である。
不可解なのは、第3極の存続を目指したはずの国交省が、JALに認めるよりも発着枠シェアの独占が進むANAHDの傘下入りを容認したことだけではない。将来、スカイマークの再独立を促すとしながら、ANAHDが同グループの発券システムの使用をスカイマークに迫っていることを黙認しているのは、さらに不可解といってよいだろう。
というのは、独自システムを放棄してANAHDのシステムを導入すると、スカイマークは顧客情報の管理・蓄積すらできなくなり、自立どころかいわば再上場の資格とでもいうべきガバナンス面での独立すら困難になるとみられるからだ。
国交省のANAHD贔屓は、民主党政権主導で再建を果たしたJALに対する与党の感情的反発が反映されたものとされる。それが事実だとしても、過去2回の羽田空港の発着枠配分における優先的な割り当ての経緯も含めて、国交省の対応は行政にあるまじき特定事業者の優遇行政といわざるを得ない。
確かに、今回のスカイマーク再建劇の大詰めで、米航空機リース会社のイントレピッド・アビエーションが主張した米デルタ航空を主たる支援パートナーとする案は、肝心のポイントがそろって「今後の検討課題」にとどまっており、仮に採用されれば2次破綻のリスクがつきまとうものだった。
加えて、日本の航空市場における第3極の存続や競争環境の維持といったイントレピッドの主張が建前にすぎず、自社の債権保全をもくろんでいるのが透けて見えたことも、同案への信頼を損なったといえる。
利用者が不利益を被る懸念も
とはいえ、太田国交相は第3極の航空会社が消滅することは容認できないと言い続け、潰れなくても済んだはずのスカイマークを破綻に追い込んだ張本人だ。結果としてJALではなくANAHD傘下にスカイマークが入るように誘導したことや、形式的な会社の存続をもってスカイマークの独立性が保たれるとして、現実的にはその独立性が損なわれていく再建策づくりを黙認し続けていることは、航空機の利用者として決して容認できない。