すったもんだの末に、民事再生手続き中のスカイマークが先週8月5日、実質的にANAホールディングス(ANAHD)の傘下入りをして再建に取り組むことが決まった。対抗馬だった米デルタ航空を主体とする案が生煮えだったことから、他に選択肢がなく、2次破綻を避けるためにやむを得なかったとはいえ、昨秋の行政指導で日本航空(JAL)主導の再建案を潰して選択肢を狭めた国土交通省の行政責任は重大だ。
最終的に、国民・利用者が路線縮小や運賃高騰といったリスクにさらされる問題も見逃せない。こうしたリスクを顕在化させないためには、まず無責任な発言を連発してスカイマークの再建を迷走させた太田昭宏国交相自らが責任の所在を明確にすべきだろう。
加えて国交省は、ANAHD偏重の航空行政をただちに抜本的に見直す必要がある。ドル箱の羽田空港の発着枠については、ANAHDのピーチ・アビエーションだけに例外的に就航を認めるのではなく、幅広く内外の航空会社へ開放する必要がありそうだ。
羽田空港をめぐる“事件”
半年以上にわたって迷走したスカイマークの経営再建案づくりが一応の決着を見た途端の先週末8月8日、羽田空港をめぐって国内外航空関係者が唖然とする“事件”が起きた。ピーチ・アビエーションが、国内LCC(格安航空会社)として初めて羽田空港に就航したのである。路線は台北線で、週6便を運航するという。
実はこれまで国交省は、羽田に就航する国内線の発着枠をANA、JALの2大フルライン航空会社とスカイマークやエアドゥといった新興航空会社に限定し、頑なにLCCには与えてこなかった。深夜・早朝の国際線枠については、この限りではないとしていたが、機材繰りも困難なためLCC各社は関東の拠点を成田空港に置かざるを得ない状況となっていたのだ。
そうした中でピーチが就航した台北便は、羽田着が午前4時45分。そして羽田発が午前5時55分だ。就航当初はともかく、電車もリムジンバスも動いていないこの時間帯の利用客を安定的に確保していくのは、経営的に容易なことではないはずだ。いったいなぜ、こんな悪条件のもとで、あえてピーチは羽田に就航したのか。
航空関係者たちが疑心暗鬼になったのは、スカイネットアジア航空、エアドゥ、スターフライヤーに続いてスカイマークが事実上、ANAHDの傘下に入ったことで、同グループが羽田の発着枠(1日465便)の60%という大きなシェアを押さえることになった意味だ。いくら羽田の発着枠がドル箱といっても、国内便だけでは稼げる路線に限りがある。そこで、ANAHDは発着枠を国際線に転用しようともくろんでおり、利用者のニーズの存在を示すため、ピーチに就航させてグループとして実績をつくろうとしているのではないか、というのである。