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ハワイがGW旅行の穴場?値下げで5日間ツアーが15万円台…自炊で安く満喫

文=A4studio
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ハワイ(「gettyimages」より)

 このゴールデンウィーク(GW)期間中、ハワイ行きの航空便に空席が目立っているうえ、ハワイ旅行のツアーや現地ホテルの料金が大幅に値引きされているという話題が注目されている。円安の影響で現地のレストランで家族4人で朝食を食べるだけで1回あたり1~2万円を超えてしまうというケースもニュースで伝えられているが、日本からレトルト食品などを持参して自炊することで“安くハワイを満喫”する人もいるという。今、ハワイ旅行はオトクなのか、そして安く楽しむ方法があるのか。業界関係者の見解を交えて追ってみたい。

 25日放送のフジテレビ系番組『Live News イット!』は、このGW中、日本からハワイ行きの航空便に空席が目立っており、一部の旅行会社では成田空港発のハワイ5日間のツアーが15万円台で販売されていると報道。ホノルルの高級ホテルでは宿泊料金の50%オフが行われているケースも出ているという。

 日本航空(JAL)の29日の成田発ホノルル行きの航空便をみてみると、21時5分発の便は 59万1800円(大人一人/エコノミークラス)となっており、28日10時時点でも予約は可能。サイト上でシートマップをみると全席のうち2~3割ほどが選択可能となっている。また、GW期間中の平日にあたる5月1日の20時45分発の便のシートマップでは5割ほどが選択可能となっている。選択可能な席がすべて空席とは限らないが、満席という状態ではなさそうだ。

 旅行ツアーのなかには格安ものもみられる。旅工房のサイト上ではGW中の出発分でも5日間のツアーが15万9800円で販売されていた(現在の取り扱いは要問合せ)。成田発ホノルル行きの航空料金(ハワイアン航空)とホノルル市内のリゾートホテル宿泊料がついている。エイチ・アイ・エス(HIS)では5月3日・東京発ホノルル行きのツアーが4泊で19万9800円で販売されていた(現在の取り扱いは要問合せ)。航空便はJALかANAで、宿泊ホテルは「ホリデイインエクスプレス ワイキキ」。

「アメリカの平均時給は33ドルほどであり、1ドル=約150円で計算すると日本円だと約5000円。大雑把な目安としては、日本で1000円で買えるものがアメリカだと2000~3000円するという感じだろう。そもそもハワイは観光地なので物価は割高だが、例えば家族4人で朝食をとるためにレストランに入ってワンプレートにドリンクが付いたセットを人数分注文すれば、日本だと一食1000円×家族4人で4000円のところ、ハワイでは8000~1万2000円になる。なので『朝食だけで1万円』ということになる。

 こうした割高さが、コロナが落ちついた2年ほど前からテレビやネットニュースなどで頻繁に伝えられるようになったことで、人々の意識に強く刻まれ、旅行先の候補リストからハワイが外れるようになっているのかもしれない。もっとも、円安のせいで日本人の海外旅行者数はコロナ前より半減しており、ハワイに行く人の数も同様に大きく減るのは当然」(金融業界関係者)

 旅行業界関係者はいう。

「GW期間中の航空便や現地ホテルの予約状況が伸びず、旅行会社やホテルが値下げに走ったため、4月中旬からGW直前くらいまでは確かにハワイは“GW旅行の穴場”と化していたともいえる。航空便の席を確保済の旅行会社やホテルとしては、客がゼロよりは想定より低い金額であっても売れたほうがよいので、急いで値下げに走ったということだろう」

旅行中の食事は自炊

 日本政府観光局(JNTO)によれば、コロナ前の19年の日本人出国者数(推計値)が2008万600人だったのに対し、昨年(23年)は半分以下の962万4100人にとどまっている。落ち込みの大きな原因は円安の影響で費用がかさむためだが、ハワイ旅行者のなかには、数名のグループでキッチン付きホテルに宿泊して、日本からレトルト食品や乾麺などを持ち込み自炊することで旅行費用を抑える人も増えているという。

「個人的には全然アリだと思う。非常に賢い行動。日本人は海外旅行でその土地の美味しいものを食べるということに価値を感じて食事に高額の出費を厭わない傾向があるが、たとえばアメリカ人のように現地ならではの体験に重きを置き、食事はなんでもよいというお国柄の人も多い。ハワイには綺麗な海やビーチ、自然、気持ちの良い気候など、お金をかけなくても味わえる魅力は山のようにあるわけで、わざわざレストランで高いステーキやラーメンを食べる必要はないし、日本のほうが安くておいしいものは多い。特に若い人であれば、仲の良い友人たち数人でホテルに泊まて、夜はみんなで料理をしながらお酒でも飲んで、昼はいろいろなところに足を運べば十分に満喫できる」(旅行業界関係者)

 日本ではホテルなどの宿泊料金が高騰しているが、それと比較すればハワイのキッチン付きホテルの料金は高くはない。たとえばワイキキの「イリカイ ホテル アンド ラグジュアリ スイーツ」の4月の料金をみてみると、「ラグジュアリー ジュニアスイート シティービュー」は4人利用で一泊計203ドル(上限値)となっており、一人当たり約50ドル、約7500円となる(税金、リゾート料金<アメニティーフィー>などは別)。

 当サイトは2022年10月1日付記事『ハワイ旅行2週間で総費用250万円…日本経済停滞の影響、海外旅行は遠い存在に』でハワイ旅行の実情について報じていたが、以下に再掲載する。

――以下、再掲載――

 8月25日放送の情報番組『グッド!モーニング』(テレビ朝日系)で、ハワイ旅行に訪れた4人家族の日本人観光客を取材したところ、2週間の旅行でかかった費用がなんと250万円にものぼったと紹介されていた。コーヒー1杯が1400円、ラーメン店を家族で利用して1万円以上かかったなど、衝撃的な物価高騰が起こっているようだ。そんな物価高騰にもかかわらず、ハワイ旅行の予約者数は昨年の10倍にまで増えているという。

 そこで今回は、観光学に詳しい駒沢女子大学の准教授・鮫島卓氏に、ハワイの物価高騰の背景や、一般庶民では海外旅行に手が届かなくなりつつある現状などを解説してもらった。

海外渡航自由化で初めて開かれた桃源郷……日本人がハワイを好きなワケ

 日本政府観光局が出している統計「各国・地域別 日本人訪問者数」の2016年のデータを見ると、1位の渡航先は約357万人でアメリカとなっており、とりわけハワイの人気が高いようだ。まず、こうした日本人のハワイ好きはいつから始まったのだろう。

「日本の海外渡航の自由化は、1964年に行われた外為規制の緩和措置によって初めて解禁されました。当時、海外旅行にかかる代金は日本人の平均月収の約10倍に達することもあったので、庶民が海外旅行を楽しむには、航空会社や旅行会社が取り扱った旅行積立などの利用が不可欠でした。そんな旅行積立プランによる最初の行き先が欧州とハワイだったのです。その後、日本でハワイは爆発的な人気を獲得し、バブル崩壊直後の1997年には最盛期を迎え、同年のハワイへの年間渡航者数は約222万人にも及び、日本人海外旅行ナンバーワンの渡航先となりました」(鮫島氏)

 その後、日本経済は長く続く低迷期を迎えるわけだが、鮫島氏いわくそれでも海外旅行人気はしばらく衰えなかったという。

「それから2008年にリーマン・ショックが起きたことで日本人のお財布事情が厳しくなり、翌年のハワイ渡航者数は116万人にまで激減します。しかし、このショックは徐々に沈静化。2011年には円高が進行し、対ドルレートで1ドル80円台まで達していたので、低迷期を迎えてもなおハワイは日本人にとって割安な旅行先でした。

 実際、ヒルトンホテルに3泊5日のハワイ旅行ツアー料金がなんと5万円台というものもありました。現在、同じツアーであれば20万円はしますから、その差が明らかです。その後、コロナ禍直前の2018年や2019年頃は、年間約150万人から160万人前後の渡航者数まで回復し、安定していました」(同)

経済低迷、コロナ禍、ウクライナ侵攻でハワイへのハードルは上がり続ける

 そんなハワイ旅行が今、驚きの物価高騰で世間を騒がせている。番組ではラーメン店で家族で1万円以上かかったなどのショッキングな情報も飛び出していたが、これは本当なのだろうか。

「4人家族で1万円ということは単純計算で見るとラーメン1杯で2500円くらいの計算になりますが、現在の状況を考えると妥当な金額です。こうした高騰は当然その他の飲食店や服飾店、レジャー施設でも同様。観光費用の高騰もそうですが、航空券に付加される燃油サーチャージの高騰も顕著で、こちらの負担のほうが旅行者的には厳しいでしょう」(同)

 こうした物価高騰は、大きく2つの原因に分かれていると鮫島氏と続ける。

「価格高騰には長期的理由と短期的理由の2つがあります。長期的理由から述べますと、日本はずっと経済成長の鈍化とデフレ状態で、20年以上平均賃金はほぼ変わっていません。ついに韓国にも抜かれてしまいました。一方で、世界の経済成長は日本よりも高く、賃金も比較的上昇傾向にありました。特にアメリカは経済成長に伴って物価も上昇しているのですが、所得も同時に上がっていました。経済の低迷を続けている日本との差が徐々に開いていく傾向がコロナ禍前から見られました。ですから、海外渡航時、日本人にとって相対的に物価が高く感じてしまうのです。

 さらに短期的な理由として、コロナ禍とロシアによるウクライナ侵攻の影響が加わります。コロナで航空便やホテルの供給量が大幅に小さくなったため、商品単価を上げざるを得ません。また、ウクライナ侵攻で石油や天然ガスの禁輸措置や小麦などの生産量が減少してしまった影響で、世界的に輸入原材料の価格が高騰したことも、物価高騰の要因といえるでしょう。さらに最近のドルに対する急激な円安は、海外旅行の負担額増加に拍車をかけています」(同)

 だが、こうした状況でありながら、ハワイへの日本人観光客は増加中だとも報じられている。

「これは『何と比べて増加しているのか』に注目する必要があります。確かにコロナ禍による渡航制限の厳しくほとんど渡航者がいなかった前年に比べれば、旅行予約数は何倍にも上昇しています。これは今まで行けなかった分を取り返そうという消費者による予約で、俗に“リベンジ消費”と呼ばれています。ですがハワイへの日本人旅行者数の実態は、コロナ禍前のレベルには全く達していません。あくまで再生の途上という状態です」(同)

富裕層と庶民で差が広がり続ける、海外旅行というレジャーの行く末とは

 今後、ハワイに限らず海外旅行全般は、日本人にとって「庶民の贅沢」を超えるものになってしまうのだろうか。

「円安と日本の所得が低迷し続ける限りは、海外旅行のハードルが上がり続けることは間違いないですね。リベンジ消費で旅行に行ける可処分所得がある人ならいざ知らず、物価が上がる一方で所得がなかなか増えない庶民目線でいえば、コロナ禍による長い外出制限で、海外旅行がこれまで以上に特別な存在になってしまったはずです。コロナ前の2019年では、日本人の年間海外旅行者数は2000万人を超えていましたが、そのレベルに達するのは簡単ではないと思います」(同)

 最後に、今後ハワイ旅行が身近なレジャーとして戻ってくる可能性について聞いた。

「海外旅行が回復するポイントは2つです。ひとつは日本政府の水際対策の緩和のタイミング。訪日外国人のみならず日本人の海外旅行者にも、日本入国の条件としてワクチン接種や国によっては陰性証明書などの制約が課せられ、大きなハードルとなっています。世界の国々は入国規制を撤廃し、正常化している中で、日本はいまだに厳しい水際対策を堅持しています。水際対策が緩和され、開国が進めば国際線航空便の復帰や増便も促され、価格も手頃なものになっていくでしょう。

 もうひとつは、為替相場の動きです。円安は確実に海外旅行にはマイナスに働きます。これが長期的な動きとなると、ハワイは“気軽な旅行先”から“憧れの旅行先”へ変わってしまう可能性があります。為替レートは、日米金利差や経済状況によって変動しますので、日銀の金融政策や政府の為替政策の変更があるのかも注目ポイントですね。

 一方で、インバウンドには、円安は絶好の機会です。外貨を稼ぐインバウンドによって経済効果が高まれば、為替を安定化させる力が働きます。また、国際線航空便の増便も期待できるので、その意味では、海外旅行のためにもインバウンドは重要だといえます。

 いずれにせよ旅行に行きたいという人間の欲求がなくなることはありません。またコロナ禍の影響で、旅の大切さを考え直した人も多いと思います。その意味では、旅に対する価値観が変わり、よい良い旅をしたいと思う人は増えているのではないでしょうか」(同)

 鮫島氏いわく、日本人観光客の激減でハワイの人々にとっての“太客”は今、ニューヨーカーになってしまっているという。刻一刻と変わっていく日本人とハワイの関係の行く末が明るくなることを願うばかりだ。

(文=A4studio)

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