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大西宏「コア・コンセプトのビジネス学」

アップル、驚異の利益独占 スマホメーカー全体の9割 シェア1位のサムスン退潮鮮明

文=大西宏/ビジネスラボ代表取締役

 販売価格が異なることは結果にすぎません。注目すべきは、なぜアップルは安い原価で製造して高い価格で売れるのに、他メーカーはそうではないのかという点です。

 その理由は、競争環境や競争戦略の違いでしょう。ちなみにアップルの売上総利益率は4割近いのですが、コンテンツやアプリの販売手数料は30%なので、いかにハードでも高い粗利を稼いでいるかがわかります。

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 アンドロイド搭載スマホのなかで一人勝ち状態を維持し、出荷台数もシェアも伸ばしてきたサムスンは、12年に販売台数でアップルから首位の座を奪います。それ以降、世界スマホ市場の先頭をひた走り、その翌年の第2四半期には営業利益でもiPhoneを追い越しています。サムスンの「規模の経済」で優位に立つという戦略が成功していたのです。

サムスン退潮

 しかし、その常勝サムスンの勝利の方程式が崩れます。

 変調が表面化したのは14年4-6月期の連結決算で、9年ぶりに売上高、営業利益ともに前年同期を下回るという異変が起こりました。いわゆるサムスンショックです。原因はスマホ事業での不振でした。しかも、それは退潮の序章にすぎなかったのです。14年7−9月には60%減、10-12月は36%減、15年1−3月は31%減と前期比で連続して営業利益を落としてきています。

 要因は、まるで経営学の教科書に出てくるような環境変化です。ひとつは、先進国スマホ市場の成熟で、市場の焦点が価格競争を引き起こしやすい新興国に移ったこと。もうひとつは、その代表的な市場である中国でファーウェイやシャオミといった自国勢に、さらにインド市場でも同国ベンチャー企業マイクロマックス・インフォマティクスの攻勢を受けてシェアを落としたことです。市場の伸びが鈍化するなかで価格競争が始まり、その価格競争に巻き込まれ、しかも途上国の新規参入組にシェアを奪われるという構図です。

 では、なぜアップルはこうした環境変化の影響が軽微なのでしょうか。

 実はアップルが業界利益を独占しているのは、スマホだけではありません。米マイクロソフトに敗北したと思われているPC市場でも、全業界利益の6割をアップルが独占しているのです。

 スマホでもPCでも、アップルはライバルと正面切った競争をしていません。iPhoneのiOS、MacのOS Xという独自の世界に顧客を囲い込み、競争を避けています。創業者の故スティーブ・ジョブズは「シェアは追求しない」と繰り返し発言していました。競争しないこと――。それはおそらく、PCを最初に世に送り出しながらマイクロソフトに敗れ、自らが創業したアップルからも追い出されたジョブズの「弱者としての知恵」だったのかもしれません。だからこそ、自社のOSに、またiTunesやAppStore、またApple Musicで顧客を囲い込むのです。

大西宏/ビジネスラボ代表取締役

大西宏/ビジネスラボ代表取締役

ビジネスラボ代表取締役。自称「マーケティングの棟梁」

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