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ソフトバンク、完全なる誤算 世界戦略の要が「お荷物」化 容赦なき介入で再建断行

文=佐野正弘/ITライター
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 孫氏はその1つの取り組みとして、OPEX、つまり営業費用を大幅に削減することだと話している。ボーダフォン日本法人を買収した際、同社は赤字経営が続き、ブランドイメージも大きく損なわれていた。そこで孫氏は、売り上げを急に増やすのは難しいと判断。既存の顧客基盤を生かしながら営業費用を大幅に削減することで、まずは利益を生み出す体制をつくり上げたのだという。

 ある程度その体制が出来上がった後に取り組んだのはCAPEX、つまり設備投資の効率化を図ることであった。携帯電話事業で最も重要な商材はネットワークであり、端末や価格に魅力があっても、ネットワークが充実しなければ継続的な利用にはつながらない。そこで設備投資を抑え、工期も短縮しながら、他社に勝てるネットワーク実現に向け、さまざまな取り組みを実施した。その結果、日本のキャリアの中では最も少ない設備投資額ながら、他社を上回る接続率を記録するネットワークを実現できたとしている。

 また端末に関しても、資金力が弱く、当時主流であった販売奨励金を用いた割引販売が難しかったことから、割賦販売を取り入れ、割賦債権を流動化することによって資金の圧縮に成功。ネットワークと端末という2つの大きな投資を圧縮することで、負債を急速に減らし、財政の健全化を進めたとされる。

ソフトバンク、完全なる誤算 世界戦略の要が「お荷物」化 容赦なき介入で再建断行の画像2スプリントの経営改善は、営業費用の大幅な削減と、設備投資の効率化によって実現するとしている

2年間で競争力を大幅に回復できるか

 ソフトバンクGは、スプリントもこれと同様のシナリオで再建を進めていくという。まずは営業費用の削減で利益の出せる体制をつくり上げており、売り上げは減少しているものの利益が出るようになってきた。

 今後の要となるネットワークに関しても、ソフトバンクGが積極的に介入することで、従来より効率がよく、なおかつ他社を上回ることができるネットワークをつくり上げる体制が整ったとしている。当初はスプリント側のエンジニアが新しいネットワーク設計案を提示してきたものの、コストが大きくかかる上に内容がライバルと大きく変わらないとして、その設計案を拒否。ソフトバンクG自らが設計に介入することにより、少ない投資でライバルに勝てるネットワーク設計が出来上がった。

 また端末に関しては、スプリントではリース販売が増えていることから、リースファイナンスによって資金繰りを賄う方法を編み出した。そのために現在リース会社の設立を進めているとのことで、これによってネットワークと端末の両面から投資を抑えつつ、競争力を高めていく方針が固まった。

 もっともソフトバンクG自身が設計に携わったという新しいネットワークに関しては、詳細が明らかにされたわけではない。同社はそのポイントとして、スプリントが保有している120MHz幅という非常に広い2.5GHz帯の周波数帯を有効活用することを挙げている。だが2.5GHz帯は遠くに飛びにくい帯域であるため、スプリントの最も大きな弱点となっているエリアカバーの改善に役立てるのは難しい。それだけに、この帯域をどのように活用してネットワーク改善を進めようとしているのかは、まだ見えてこない部分もある。

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