買収した米スプリントの携帯電話事業の不振が続くソフトバンクグループ。同社は8月6日の決算説明会にて、そのスプリントの業績回復に向けた具体的な施策について説明した。ソフトバンクGはどのような施策をもって、スプリントを再建しようとしているのだろうか――。
新たなスプリント再建策を打ち出した背景
去る8月6日、ソフトバンクGは2015年度第1四半期の決算説明会を実施した。同社の連結決算自体は、売上高が前年同期比9.8%増の2兆1391億円、営業利益は7.6%増の3436億円と比較的好調であり、決算説明会においてもパーソナルロボット「Pepper」が決算内容を発表するなど、余裕を見せていた。
だが今回の決算発表会における話題の中心は、決算内容ではなかった。ソフトバンクG社長の孫正義氏が決算説明会で力を入れて説明したのは、13年に買収した米スプリントの再建に関する施策だった。
しかしなぜ、国内の通信事業でも、最近力を入れているインターネット事業でもなく、スプリントの再建策に関する説明に重点が置かれていたのだろうか。その理由は、不調が続いているスプリントを取り巻く状況が、最近一層悪化したことにある。
それを象徴しているのが、米国携帯電話市場において、スプリントが4位に転落したことだ。スプリントは4日に決算を発表し、総契約件数が5766万件であることを発表。その結果、これまで4位であったTモバイルUSの総契約件数(5890万件)を下回ったことが確実となり、長い間維持してきた3位というポジションを失ったのである。
スプリントの不調ぶりが一層鮮明になったことで、以前からくすぶっていた、ソフトバンクGが再建を諦めてスプリントを売却するのではないかという臆測が再び飛び交うようになった。そうしたことからソフトバンクGは、スプリントを売却しないことをあらためて表明すると共に、再建策を打ち出し“火消し”をする必要に迫られたといえよう。
少ない投資でライバルに勝つネットワークをつくる
では、ソフトバンクGはどのような手法でスプリントの業績を回復させようとしているのだろうか。当初もくろんでいた、TモバイルUSを買収しスプリントと合併させて“第3極”をつくり上げる戦略は、米当局の反対に遭い実現できなかったことから、不振を極めているスプリントをどうやって立ち直らせるかは、注目されるところだ。
ソフトバンクGではTモバイルUSの買収を断念して以降、日米の経営陣が議論を重ねたというが、その結果として導き出された答えは、やはりボーダフォン日本法人を買収して日本の携帯電話市場に参入して以降展開してきた手法を、スプリントにも取り入れることであったと、孫氏は話している。