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HIS、ユニゾへの敵対的TOBにソフトバンク系も参戦…「必要な企業は買収」が定着か

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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HISが手がける、ロボットバリスタがコーヒーを入れる「変なカフェ」(写真:東洋経済/アフロ)

 

 7月10日、大手旅行会社のエイチ・アイ・エス(HIS)が、国内外で不動産事業などを展開するユニゾホールディングス(ユニゾ)に対し、株式公開買い付け(TOB)を実施すると発表した。HISが提示した買い付け価格は普通株式1株当たり3100円(7月9日の終値に対して約56%の価格上乗せ<プレミアム>)である。HISはTOBを通してユニゾの株式の45%を取得することを目指している。

 一方、ユニゾはHISとの間に信頼関係がないといった点などを挙げ、TOBに強く反対している。これにより、HISによるユニゾへのTOBは敵対的なもの(買収を提示された側が反対する案件)となった。日本では、企業は売ったり買ったりするものではないとの考えが多かった。そのなか、HISによる敵対的TOBは、国内M&A市場に一石を投じることになるのではないか。HIS創業者である澤田秀雄氏は買収などを用いて事業規模を拡大してきた。加えて、ユニゾが出資や買収によって成長してきたソフトバンク傘下の投資ファンドと組み、HISに対抗しようとしている。どのような展開となるか、非常に興味深い。

日本には珍しい敵対的なTOB

 これまで、日本の企業経営では、“調和”が重視されてきた。企業の買収に関しても、相手が「いやだ」と反発しているにもかかわらず、資本の論理(株式保有比率の引き上げなどによる意思決定力の増大)に基づいた企業の支配を目指す考えは少なかったように思う。それよりも “和を以て貴しとなす”の考えが重視されてきたといえる。

 国内のTOBの歴史を振り返ると、伊藤忠やデサントのケースのように、資本関係があった上で双方の利害が対立し、結果的に敵対的TOBに発展してしまったケースはあった。そうしたケースを除くと、敵対的なTOBが成功したケースはほとんど見当たらないといってもよいだろう。スティール・パートナーズによるブルドックソースへのTOBはその一つのケースだ。また、敵対的TOBは組織を混乱させてしまう。

 敵対的なTOBによって一方が相手企業への支配力を強めることよりも、ソフトアライアンスを通した協力などが目指されることが多かった。HISがユニゾに対して行ったように、企業同士の関係が浅い、あるいはほとんどないケースにおいて、「資産内容が魅力的なのでわが社と一緒に事業を行おう」と突如として協業が申し入れられ、それが買収に発展するケースは珍しい。なお、HISは澤田氏が創業した企業であり、ユニゾは大手銀行系の不動産企業である。

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