営業利益が黒字に転換したのは、上場子会社の業績改善が進んだことによる。前年同期に赤字だった上場子会社6社のうち、ぱどを除く5社が黒字転換した。アパレル子会社の不採算店を閉鎖したり、CD販売店の余剰スペースでイベントを開くなど収入確保に努めた。
20年3月期通期は5億円の黒字化を目指しており、何をおいても黒字化という公約を達成する。とはいえ、利益水準は最高益だった18年3月期(90億円)を大幅に下回る。9月末で82ある子会社のうち、まず、ぱどを売却。これで10億円の売却益を得る。サンケイリビング新聞社の売却も取り沙汰されている。
経営不振企業の買い漁りが復活するのか
新たな買収の凍結と買収した企業の立て直しは、6月の株主総会で取締役を退任した「プロ経営者」松本晃氏が残した宿題である。松本氏は米ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人社長、カルビー会長兼CEOを経て、18年6月、三顧の礼をもってライザップGのCOO(最高執行責任者)に迎えられた。
当時、瀬戸社長は「毎月10社を資産査定し、平均1社を買収する」と豪語していた。松本氏は「ライザップG は成長と膨張をはき違えている」として、新規のM&Aの全面凍結し、収益を上げられる事業に絞り込む体制を再構築すべしと進言した。新規M&Aを凍結には、瀬戸社長はなかなか首を縦に振らなかった。経営不振企業のM&Aが同社の「利益の源泉」だったからだ。
キーワードは「負ののれん代」。のれん代とは企業の買収で支払った金額と買収先の純資産の差額をいう。同社が採用している国際会計基準では、安く買収した場合は「負ののれん代」として利益に一括して計上できる。「のれん代」を損金として償却するのとは真逆の錬金術である。ライザップGは「負ののれん代」によって利益をかさ上げしてきた。
結局、瀬戸社長は松本氏のアドバイスを受け入れた。新規のM&Aを停止し、「負ののれん代」を計上できなかったことで19年3月期は最終赤字に転落した。次の宿題は買収した企業の立て直しだ。赤字だった上場子会社6社のうち5社は黒字転換した。赤字が続くぱどは売却するが、安値で買収したため売却益が出そうだ。今後も経営不振企業の立て直しを進めるが、利益を出すのは容易ではない。売却しても、ぱどのように売却益が出るという保証はない。
では、どうやって利益を確保するのか。経営不振企業を買収して、「負ののれん代」を計上することで利益をかさ上げするのが手っ取り早い。ぱどをFUNDBOOKの経営者に売却したことについて、株式市場の一部ではM&A路線に回帰する布石と受け取られている。FUNDBOOKを介して企業の売買を行うのではないか、との見方が浮上している。
(文=編集部)