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町田徹「見たくない日本的現実」

消費増税の負担強いる一方、「アベノミクスの成功」演出のためバラマキ予算

文=町田徹/経済ジャーナリスト

 16年度の増加額は、前年度当初予算比で4441億円。単年度分としては、なんとか「財政健全化計画」で打ち出した増加の枠内(5000億円以下)に抑えている。

 しかし、16年度予算案がリーズナブルとはいえない。というのは、国民に消費税率8%への増税という負担を強いておきながら、その血税を大切に使おうという姿勢が見えないからだ。

 加えて、日本銀行の異次元緩和や15年度までの財政出動の結果、16年度の税収は57.6兆円と25年ぶりの高水準を見込んでいるにもかかわらず、財政健全化の取り組みが十分でないことも見逃せない。

 金融・財政政策の経済への効果は一時的なものにすぎないという問題を横に置くとしても、12年度に比べて15兆2580億円も税収が増えるというのである。相応の予算を財政再建に割くべきだろう。ところが、政府予算案が国債新発額を9兆8120億円しか減らしてないのは、明らかに不十分だ。

バラマキに腐心

 そこでクローズアップせざるを得ないのが、16年度政府予算案が財政再建を先送りする一方で、来夏に迫った参議院選挙をにらんで、かつての公共事業とは違うバラマキに腐心する内容になっている点である。

 第1が、診療報酬の改定だ。価部分をある程度引き下げたものの、医師の技術料など本体部分は0.49%引き上げた。日本医師会という強い政治圧力団体に配慮する首相官邸の意向で押し切られたと、国庫の金庫番の財務官僚たちはほぞをかんでいるという。薬価引き下げの原動力になったジェネリック医薬品の薬価が、まだ米国などと比べて1桁高いという問題もある。

 第2に、政府が16年度予算案に先駆けて12月18日に閣議決定した、15年度補正予算案とのリンクである。安倍政権は、子ども1人あたり3000円を支給する子育て給付金の16年度からの廃止を決めていたが、この補正予算で「一億総活躍社会」の実現に向けた政策と称して、低所得高齢者(約1100万人)への現金給付(1人当たり3万円、総事業費3624億円)を打ち出し、参院選向けの「高齢者優遇」との批判を浴びた。高齢者への現金給付がどう「1億総活躍社会」につながるのか不明なうえ、支給を始める時期のめどが来年6月と、参院選を意識していることが露骨に伺えたからだ。

町田徹/経済ジャーナリスト

町田徹/経済ジャーナリスト

経済ジャーナリスト、ノンフィクション作家。
1960年大阪生まれ。
神戸商科大学(現・兵庫県立大学)卒業。日本経済新聞社に入社。
米ペンシルべニア大学ウォートンスクールに社費留学。
雑誌編集者を経て独立。
2014年~2020年、株式会社ゆうちょ銀行社外取締役。
2019年~ 吉本興業株式会社経営アドバイザリー委員
町田徹 公式サイト

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