クリスマス・イブの12月24日、安倍政権は閣議決定により、またまたツケを先送りする2016年度予算案を国民にプレゼントする方針を決めた。
この予算案の最大の特色は、社会保障費を前政権が策定した12年度当初予算(26兆3901億円)より5兆円以上多い31兆9738億円に膨らませた結果、歳出総額が過去最大の96兆7218億円に達したことである。
その一方で、国と地方を合わせた借金残高は過去最悪の1062兆円に膨らんでおり、将来世代の負担は深刻さを増している。日本の財政への国際的な信認は、相変わらず揺らいだままである。
このままでは、消費税の税率を再来年4月に10%への引き上げるだけでは足らず、遠からず20%前後への引き上げが議論される時代が到来するだろう。来夏に迫った参議院議員選挙での勝利を最優先する安倍政権の経済運営の刹那主義は危うさを増す一方だ。
バランスを欠いた経済運営が深刻な不況を長引かせる結果になった民主党政権時代の経済運営を褒めるつもりは毛頭ないが、安倍自民党が政権を奪還して以来、社会保障費の膨張はとどまるところを知らない。
16年度予算に盛り込まれた社会保障関連予算額は、株式市場のバブル相場が崩壊した直後の1990年度(11兆6148億円)との比較で2.8倍に膨らんだ。90年度の7.0兆円から2000年度の11.9兆円に膨らみ、厳しいバラマキ批判を呼んだ公共事業費と比べても、その急増ぶりは突出している。ちなみに、公共事業費は16年度予算案で6.0兆円と、90年度を下回る水準に抑え込まれている。
リーズナブルとはいえない16年度予算案
確かに高齢化社会で年金や医療、介護の費用が膨らむのは必然であり、社会保障費を減らすのは容易なことではない。
昭和50年度以降の40年間を見ても、当初予算ベースで社会保障費を前年度より抑制できたのは、2兆3177億円を圧縮した12年度の1回だけである。この予算は、当時の野田佳彦民主党政権が「日本再生元年」と位置付けて蛮勇を振るったものだ。
とはいえ、財政破綻はもちろん、財政に対する信認が揺らぐこともあってはならない。安倍政権も、その点を完全に無視しているわけではないだろう。今年6月にまとめた「財政健全化計画」で、今後3年間の社会保障費の伸びを約1兆5000億円に抑える方針を掲げたのは、その証左といえる。