リコールは通常、事故などの未然防止のため、不具合の原因を特定してから製品を回収・無償修理する。原因が特定されなければ再発する懸念があるためで、原因に応じて自動車メーカーとその部品に関連するサプライヤーなどがリコール費用を分担する。
調査リコールとは、原因が特定されていないものの、安全を確保するため自動車メーカーが予防的に実施する不具合対策。このため、原因がはっきりと特定するまでは、自動車メーカーの負担でリコールして、のちほど不具合の原因が特定された段階でサプライヤーと交渉して負担割合を決める。タカタ製エアバッグが異常破裂した原因は第三者機関を含めて調査されているものの、依然として判明していない。
自動車メーカーの業績にも影響
タカタの業績が安定的に推移している一方で、エアバッグのリコール関連費用を肩代わりしている自動車メーカーの業績に影響が及んでいる。タカタ製エアバッグの採用割合がもっとも高いホンダが発表した15年10-12月期の連結決算の営業利益は、新車販売が順調に推移したなかで同22.3%減と大幅減益となった。約500万個分の追加リコール費用を計上したためだ。15年4-9月期までは同7.9%増と増益だったのが、同4-12月期(第3四半期累計)では一転、同3%減と減益となった。リコール対策を含む品質関連費用は約3200億円に達して、新車販売の増加やコスト削減による増益効果を品質保証費用の増加で打ち消したかっこうだ。
タカタ製エアバッグのリコールは世界で5000万台を超えており、リコール関連費用の多くを自動車メーカーが肩代わりしていることから、タカタの潜在的な負債は膨らみ続けている。自動車メーカーが一部負担したとしても、タカタの負担は3000億円に達するとの見方も出ている。タカタの純資産は約1450億円で、自動車メーカーが一斉に求償した場合、債務超過に陥る可能性の現実味は増してきた。
ただ、グローバルなエアバッグメーカーは、世界でもタカタ、オートリブ、ZF TRWなど、数社にとどまる。自動車の安全装備を充実するため、車両1台当たりのエアバッグ搭載数は増え続ける傾向にあり、仮にタカタが倒産する事態に陥ると、自動車メーカーの自動車生産に支障が及ぶ。このため、自動車メーカー各社はタカタから要請された場合、経営支援することも視野に入れる。