新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、政府が打ち出した小・中・高校などの臨時休校措置。2月27日に発表され、土日を挟んで3月2日から休校になった自治体・学校は多く、あまりの展開に教育関係者は「宿題を準備する時間もなかった」と悔やむ。一方で、春休み終了まで1カ月間、子どもたちの教育と世話を丸投げされた保護者たちは「どうやってこの期間を過ごさせればいいんだ?」と悩みを深めている。こうした事態に教育関連事業者などは続々と期間限定でサービスの無料提供を発表している。どんなものがあるのか調べてみた。
見た目はしょぼいが使える「東京ベーシックドリル」
東京都がホームページ上で無料提供するのは「東京ベーシックドリル」だ。ドリルは小学校1年生から中学1年生までの国語と算数・数学、小学校3~4年生の理科・実験、中1の英語、社会の地図などを網羅している。パソコン、タブレット端末などから問題用紙と回答のPDFをダウンロードし利用する。
東京都教育庁指導部義務教育指導課の担当者は「月末にダウンロード数を集計しているので、まだ実数はわからないけれど、問い合わせやダウンロードは急激に増えている印象です」と話している。
東京都内の20代の母親は次のように使用感を語る。
「正直、イラストとかもないですし、見た目はしょぼいですが1年間のざっくりとした復習には使えると思います。ママ友のLineグループで、『とにかくやることが本当になければこれをやらせて!』と回ってきたので、使っています。ただ休みは1カ月あるのに、ドリルの問題は、国語の漢字が各学年40問程度、算数が50~60問程度しかなく、がっつり勉強させたい家庭には物足りないかもしれません」
ベネッセ電子図書館は会員登録がネック
一方、民間事業者も続々と参入している。
ベネッセコーポレーションは同社が運営する学習サービス「進研ゼミ」の小学生、中学生、高校生向け「春の総復習ドリル」を学年ごとに無償配布すると発表した。ドリルは会員登録不要で、PDFをダウンロードできる。また進研ゼミ会員が自由に使える、日本最大級の「電子図書館 まなびライブラリー」を、「期間限定会員登録」をすると使用できるサービスも実施している。
ネックは電子図書館の期間限定会員登録で、千葉県の30代保護者男性は「ネット図書館サービスを利用したいと思ったけれど、会員登録が煩わしい。進研ゼミのダイレクトメールが山のように届いた自分の子ども時代が繰り返される気がします」と残念がる。
カギは「YouTube」の有効活用か
一方で通信教育大手「Z会」は小学生から大学受験生までの教材を用意している。Z会への登録は不要だという。教材の中でもYouTubeを使った「探究学習アーカイブ」は評価が高いようだ。以下、同社のホームページの説明だ。
「新型コロナウイルス対応として、自宅待機の中高生を対象に、Z会Asteria総合探究講座の探究学習のアーカイブの一部をYouTubeZ会公式チャンネルにて無料公開しています。
さまざまなジャンルで活躍する人の講義を受けることができるZ会Asteriaの探究学習。学習を通じて自分たちが生きる社会の課題について深く考えたり、近い将来自分はどのように社会に貢献できるかを考えたりすることができます」
動画授業では、株式会社ユーグレナ副社長の永田暁彦氏、聖心女子大学教授の益川弘如氏や、Space BD株式会社 ローンチサービス事業副本部長兼マーケティング部長の金澤誠氏など社会の一線で活躍する企業人や研究者が講師を務める。そのうえで、「あなたが考える社会の課題とは?」「新しい時代に必要となる学びとは~普段の学びのやり方を見直してみる」「宇宙産業の最前線と、今後の可能性」など科目の枠にとらわれないテーマで授業を配信している。
都内の中学校男性教員は「大人が見てもかなり面白い。勉強が苦手な子でも、ロケットとか宇宙に興味があるのなら面白いと思う。最近はネットの検索エンジンより先にYouTubeのアプリを開く子どものほうが多く、使わせやすいと思います。テストのための勉強にはならないかもしれませんが、春休らしく自分の将来のことを考えるきっかけになるかもしれません」と話す。
そのほか、学研ホールディングスは「Gakken家庭学習応援サイト」を立ち上げた。学研ニュースワイド学習百貨辞典やニューコース学習システムの無償利用が可能になるほか、「やさしくまるごと小学」「ひとつひとつわかりやすく。」の各シリーズの授業動画などを配信している。
「ビリー・ブランクス氏が考案した短期集中型エクササイズ『ビリーズブートキャンプ』のDVDを引っ張り出してきて子どもたちに見せている」との投稿がTwitter上でにぎわうほど、各家庭は創意工夫に必死だ。いつまでこの「長い春休み」が続くのだろうか。
(文=編集部)