賃貸アパート大手レオパレス21は2月27日、臨時株主総会を開催し、旧村上ファンド系の投資会社レノが提案した取締役1人の選任議案を否決した。取締役2人を選任する会社提案は賛成多数で承認された。
議案の採決は、人数を厳密に把握するため、異例の投票方式で行った。株主総会では、採決にあたり十分な議決権を確保していれば参加者の拍手で可決することが多い。投票方式は、可決か否決かが微妙で人数を厳密に把握する必要がある際に採用される。会場には決戦投票に備え、東京地裁が指定した総会検査役も同席した。会社発表によると来場者数は189人。
東洋シャッター元社長の藤田和育氏とパナソニックホームズ元上席理事の中村裕氏を社外取締役に選任する会社側の提案は可決された。レノは村上世彰氏が関与するファンド。臨時総会では議決権を行使できる基準日(1月24日)に15%を保有する大株主。株主提案では有料老人ホームを運営するシティインデックスホスピタリティ社長で、村上氏側近の大村将裕氏を取締役候補としていたが、否決された。当初、レノは宮尾文也社長を含む取締役10人全員の解任と取締役候補3人を選任する株主提案をしていたが、これを撤回し、取締役1人の選任を求める提案に修正していた。
レノと投資会社のアルデシアインベストメント、英オデイ・アセット・マネジメントの3社で、レオパレス21の45%の株式を保有していたが、ほかの大株主の賛同を得られないことから1月28日に突如、取締役全員を解任する株主提案を撤回した。レノの“途中下車”で、臨時総会の勝負はついていた、といっていいかもしれない。
レノは取締役選任に加え、レオパレスの主力である賃貸事業の外部への譲渡を主張。こうした姿勢にレオパレス側は「解体型買収だ」と反発。レオパレスの株主でもあるアパートオーナーらが、レノに対して不信感を募らせていたことが、レノの提案の否決につながった。
しかし、レオパレスの完全勝利にはほど遠かった。2月27日の東京株式市場。レノが株主提案していた取締役候補の選任議案が否決されたのをきっかけに、レオパレス株は後場に下げ幅を拡大。前日比22円(5.95%)安の348円で取引を終えた。市場は「経営改革が進展するとの期待が後退した」と受け止めた。
目標とする85%にまで入居率が回復するかどうかが焦点
施工不良問題発覚後、急激に業績が悪化した。不備のある物件で入居者の新規募集を停止。家賃収入が減り、補修工事の負担も増加。空き室が増えた場合に、オーナーに損失補てんする損失引当金を計上したため、20年3月期に2期連続で巨額の最終赤字を計上する。20年3月期の連結決算の売上高は前期比12%減の4473億円、営業損益段階で280億円の赤字、最終損益も304億円の赤字になる見込みだ。
ここへきて入居率低下に歯止めがかかってきた。20年1月の入居率は80.19%。逆ざや転落の分水嶺となる80%割れの水準を4カ月ぶりに脱した。改修工事が進み、入居者の募集を再開できる物件が増えたためとしている。転勤・進学が重なり、繁忙期となるはずの3月に計画通りの入居率(85%を予定)を確保できるかどうかが当面の焦点となる。達成できなければ、経営改善を求める株主の圧力が再び強まることになる。
6割を占める法人顧客の需要が新型コロナウイルスの影響で鈍化することを警戒するアナリストもいる。現在、抜本的な事業戦略の再構築の検討を進めており、4月をめどに取りまとめる予定だ。株主を納得させる再建策を打ち出せるかが大きなカギを握る。
今回選任された取締役の任期はあくまでも今年6月の定時株主総会までである。定時株主総会で宮尾社長以下、全取締役の“信認投票”が行われる。臨時総会で議決権を行使できる基準日(1月24日)以降も、ファンドはレオパレス株を買い増した。関東財務局に提出した変更報告書によると、2月7日時点で、レノの保有比率は16.77%(前回報告は15.76%)、アルデシアインベストメントは17.12%(同16.10%)に増加した。6月の株主総会を視野に入れた動きであることは間違いない。
昨年の株主総会で宮尾社長の取締役選任の賛成率は67.47%にとどまった。今年の総会で、どの程度の賛成票を得ることができるのか。再建策に納得できなければ、臨時株主総会では会社側についた株主が、反対票を投じることもあり得る。「現経営陣は執行猶予期間中だ」と突き放すオーナー株主もいる。6月の定時株主総会で最大の山場を迎える。
(文=編集部)