レオパレス21は旧村上ファンドの流れを汲む投資会社レノ(東京・渋谷区)が開催を求めていた臨時株主総会を2月27日に開くことを決めた。レノは経営陣の刷新が必要だとして臨時株主総会を開くよう強く求めていた。
会社側は社外取締役として東洋シャッター元社長の藤田和育氏とパナソニックホームズ元上席主幹の中村裕氏の2人を追加する議案を臨時株主総会で提案する。レノはレオパレスの宮尾文也社長ら取締役10人全員の解任と、レノが推薦する取締役3人の選任を求める株主提案をした。シティインデックスホスピタリティ社長の大村将裕氏、レノ代表取締役の福島啓修氏、弁護士の中島章智氏の3人である。レノの提案が可決されれば、旧村上ファンド代表・村上世彰氏側近の大村将裕氏を社長にする予定だった。しかし、1月28日、レノは宮尾社長など全取締役の解任を求める株主提案を取り下げた。レノは方針を転換。大村氏を1人だけ選任する議案を臨時株主総会で提案することにした。社外取締役候補の2人は撤回した。
2017年6月、電子部品商社の黒田電気の定時株主総会でレノは社外取締役の選任を求める株主提案をして認めさせた“実績”がある。レオパレスで、その再現を狙っている。なお、黒田電気はアジア系ファンドのMBKパートナーズによるTOBが成立。18年3月16日に上場廃止になっている。レノ側の提案に対し、当初レオパレスは「自己の利益を追求する目的」として反対していた。
レオパレスの株式はレノが14.46%(共同保有分含む)、筆頭株主の国内運用会社のアルデシアインベストメントが16.10%、英運用会社オディ・アセット・マネジメントが14.34%を持ち、3社で発行済みの株式の約45%を保有している。アルデシアとオディは臨時株主総会に臨む態度を明らかにしておらず、「全取締役解任」に対する賛同がレノ以外の株主に広がらなかったことも方針転換につながったとの見方が市場関係者から出ている。レノが株主提案を臨時株主総会で通すためには、臨時株主総会に出席する過半の賛成が必要となるが、その見通しが立たなかったということになる。
レオパレスの入居率は損益分岐点の80%を割り込む
レオパレスの業績悪化に歯止めがかからない。建物のオーナーから借り上げてサブリースするアパートの19年12月の入居率は78.91%だった。前月から0.30ポイント下落しており、3カ月連続で損益分岐点である80%を下回った。入居者からの家賃収入よりオーナーに支払う賃料のほうが上回ると、「逆ざや」が発生するが、その水準が80%といわれている。施工不良問題が表面化した18年春以降、入居率が前年実績を下回るのは17カ月連続となる。レオパレスは3万9085棟のすべての物件を調査。施工不良が見つかった物件の改修工事を進め、入居者の募集を順次再開した。今年3月末の入居率を「約85%に回復させる」としているが、会社側の見立て通りになるかどうかは不透明だ。
20年3月期の連結業績予想を下方修正。売上高は期初予想の5022億円から4473億円(前期比11%減)に引き下げた。最終損益は1億円の黒字予想が一転して304億円の赤字(19年3月期は686億円の赤字)と2期連続の大幅赤字となる。
入居率の低下は資金繰りに影響する。19年9月末の現預金は688億円。1カ月に最低必要となる資金は、アパートのオーナーへの支払いや販管費で300億円程度とされる。逆ざやが続くと、さらに現預金を取り崩さざるを得なくなる。
オーナーへ支払う賃料を確保するため資産の売却を進めてきた。19年10月にはホテル3棟を約160億円で売却した。国内ホテルで残っているのは築30年以上の1棟だけ。グアムのリゾートホテルは大規模で、買い手はなかなか見つからないとみられている。条件のよい物件から売却してきた賃貸用不動産の簿価は、19年3月末の170億円から9月末に80億円まで目減りした。残った物件で高く売れるものはほとんどない。売却可能な物件が底をついてきたため、逆ざやを解消できなければ、オーナーへの支払いが止まるという深刻な事態に陥った。
全国で同一のサービスのアパートを提供するレオパレスは法人契約が多い。春の転勤シーズンが書き入れ時だ。3月に「入居率85%の回復」を期待しているのは、このためだ。入居率は季節的に3月がピークで、その後は下がる傾向にある。月々の入居率が80%のボーダーラインを上回ったか、下回ったかでレオパレスの経営状態は判断できる。
6月の定時株主総会で社外取締役を過半数とする方針だったが、臨時株主総会に前倒しし、社外取締役を全体の半分を超える7人にして、企業統治の強化につなげたい考えだ。レノ以外の株主が、会社側が提案している2人の社外取締役の選任に、どのような態度を示すのか。2月27日の結果が注目される。
村上氏は現在、東芝機械と対立している。TOB(株式公開買い付け)をめぐる東芝機械の買収防衛策の発動に関して、防衛策の是非を問う裁判に発展する可能性がある。「東芝機械に当面、専念することになるのでは」と市場関係者は指摘する。これが、レオパレスでの株主提案の軌道修正とどう関係しているのかは不明だ。
レオパレスとレノは、束の間の休戦に入ったが、レオパレスの事業立て直しについては先行き“視界ゼロ”のままである。