3月16日、NHKで『新型コロナウイルス「いま あなたの不安は何ですか?」』が放送された。視聴者から寄せられた3万件から選ばれた疑問に、東北医科薬科大学特任教授の賀来満夫氏、聖路加国際病院・感染管理室マネージャーの坂本史衣氏、東邦大学教授の小山文彦氏らが答えるものだ。司会は武田真一アナウンサー、林田理沙アナウンサー。放送中もファックスやインターネットで視聴者からの質問を受け付けた。
紹介された視聴者の声には、公園で遊んでいた子どもが、近隣住民から「家にいなくていいのか」と注意を受けたというものもあった。新型コロナを恐れるあまり、このような過剰な反応があることはほかでも聞かれる。
専門家会議が示した、クラスター(集団)発生のリスク条件が番組でも改めて提示された。(1)密閉空間であり換気が悪い、(2)手の届く距離に多くの人、(3)近距離での会話や発声があるという3条件が揃った時にリスクが高くなる。
したがって、開放された空間である公園で子どもが遊ぶことは問題がないという専門家の回答があった。大人がジョギングしたり散歩するのも問題ないという指摘もあった。「食品から感染することはあるのか?」「プールやお風呂で感染することはあるのか?」といった疑問にも、食品はごく普通に洗えばよく、水で感染することはないとの専門家の回答があった。
「本を唾を付けてめくっている人も見かけるが、図書館の本に触れてもいいのだろうか」という質問もあった。その場合、本にウイルスが付着している可能性もあるので、本を触った手で目や口を触る前に、手洗いを行うことが勧められた。
政府による不要不急の外出を控えるようにとの呼ぶかけもあり、新幹線や飛行機はガラガラの状態だ。だが、密閉空間とはいえ換気がされており、ある程度の距離があり、会話や発声がないのなら、新幹線や飛行機に乗ることは感染リスクは少ないとの明確な回答があった。
観光地にも人は少なくなり、外食する人も少なくなった。観光地で人が密集するようなら感染リスクも高くなるが、そうはならない温泉などはリスクは低いとの回答。外食に関しては飲食店はいつもより衛生状態に気を配っているし、客の距離を取るように配慮しているので、リスクは低いとの回答があった。
NHKらしい良質な番組
「6月に結婚披露宴を予定しているのだが、どうしたらいいか」という質問もあった。近い距離でワイワイ話したりする立食形式ならリスクは高いが、席を離した形式ならリスクは低いとの回答だった。
マスクやトイレットペーパーとともに、アルコール消毒液が品薄になっている。アルコールでなくとも、石けんなどの界面活性剤で新型コロナへの対処は十分であるとの貴重な情報もあった。外でも家でも使うスマホをどう消毒したらいいかとの質問もあったが、界面活性剤を染みこませた布で拭けばいいという回答であった。
同番組を観たテレビ局関係者は語る。
「変な煽りや制作陣の意図的な誘導などが排除された、非常に良質でNHKの良さが出た番組だと感じます。専門家が一般の人々が抱く素朴な疑問に、顔出しでこれ以上ないくらいに明快に回答していて、視聴者に安心感を与えていました。まさに“さすがNHK”と評価でき、周囲でも“良かった”“明快過ぎて面白い”と話題になっていましたね」
新型コロナへの恐れで、社会を全面的な活動自粛のムードが覆っているが、活動するための指針を与えてくれる番組であった。
(文=編集部)