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たかぎこういち「“イケてる大先輩”が一刀両断」

レナウン、再び経営危機…不可解な「53億円の貸倒引当金」、中国・親会社にも暗雲

文=たかぎこういち/タカギ&アソシエイツ代表、東京モード学園講師
レナウン、再び経営危機…不可解な「53億円の貸倒引当金」、中国・親会社にも暗雲の画像1
レナウンの公式通販サイト「R-online “The Shop”」より

1.不可解なレナウン53億円2400万円の貸倒引当金計上

「中国のLVMH」を自称する山東如意集団の子会社であるレナウンは、2019年12月期決算を発表した。販売環境が振るわず、売上高は502億6200万円、営業利益は79億9900万円の赤字となり、10カ月の変則決算のため単純比較はできないが、2期連続の赤字となった。決算短信では貸倒引当金53億2400万円を計上した。

 会社側の説明によれば、同じく山東如意を親会社とする兄弟会社の香港・恒成国際発展有限公司に対する売掛金の回収延滞が発生し、貸倒引当金を計上したという。不可解な点の1つ目は、19年2月期決算書では、恒成国際発展への売掛金35億1800万円が計上されている点である。なぜ仕入れ先に販売する形態になったのか、不可解である。

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『アパレルは死んだのか』(たかぎこういち/総合法令出版)

 第2点は、19年12月期中に売掛金が18億円も増額され、かつ回収延滞となっている点である。回収できない企業に商品を売り込んだのも不可解である。その貸倒金額も、売上高502億円の10%以上におよぶ莫大な金額である。

 第3点は親会社の山東如意が連帯債務者となっていながら、債務保証は履行されておらず、そして全額が貸倒引当金に計上されている点である。

 レナウンの自己資本比率は19年12月末時点でも47.4%を維持している。回収延滞により、現預金は前期末の90億8300万円から53億7700万円へ大きく減少している。昨年5月に新社長に就任した神保佳幸氏は「今後、山東如意と絆を深める」と発言していたが、レナウンが3月26日に開催した定時株主総会で、神保社長と北畑稔会長の取締役再任の議案について、株式の過半を持つ筆頭株主である山東如意が反対し、否決された。両氏は取締役の職を解かれた。同日付けで毛利憲司取締役を社長に昇格させた。

 業界の名門レナウンが、このピンチをチャンスに変えてV字復活を実現することを深く祈念する。

2.続く山東如意の未払い提訴とドイツ銀行のデフォルト

 山東如意は2018年2月にJABホールディング(ルクセンブルク)からBALLYを6億ドル(約630億円)で取得することで合意したが、その後、詳細は明かされてなかった。BALLY広報担当者によると、売却はいまだ完了しておらず、JABの支援で事業は継続できていると認めている。買収資金の支払いは完了していなかったのである。

 山東如意との間で代金未払い問題を抱えているポルトガルの素材企業Calvelex社は、香港で昨年3月からの支払遅延分、18万2000ユーロ(約2184万円)に関して訴訟を起こしたと伝えられている(ロイター通信)。2月20日にはイスラエルのメンズウエアグループBagirが、山東如意による支配株取得の支払いが滞っているとして提訴の準備を進めていることを発表。山東如意の支配株を1650万ドル(約17億3250万円)で取得することに合意したが、1000万ドル不足しているという。現在協議を進めていると山東如意より発表があったが、解決されたとの情報は聞こえてこない。

 山東如意の広報担当者によると、レナウンとCalvelexの未払い問題は新型コロナウイルス感染拡大により「多大な影響」を受けたためであると説明している。しかし、どちらも昨年発生した買掛金であり、説明に合理性はなく説得力に大きく欠ける。

 3月11日には、ドイツ銀行が、来月末償還可能になるCOCO債(偶発転換社債)の返済を見送る計画だと発表され、その成り行きが注目を浴びている。ドイツ銀行は数年前から、不透明なデリバディブ取引、アメリカ関係当局からのマネーロンダリング調査、突然のリストラ策などもあり、経営破綻の可能性が取り沙汰されている。他のジャンク債も含め、今後の成り行きが注目を浴びている。

3.重なる経済環境の急激な悪化

 以上に加えて、新型コロナウイルスの感染拡大が中国市場だけでなく世界経済に予想以上の悪影響を与えている。急激な値下げに反発をともないながらも3月31日現在のNY株式市場は、NYダウ410ドル安、米国経済の成長見通し下方修正を嫌気し米国株式相場は下落。ダウ平均は410.32ドル安の2万1917.16ドル、ナスダックは74.05ポイント安の7700.10ポイントで取引を終了した。日経平均株価も続落し、3月31日の年度末で17年3カ月振りの1万9000円割れで終えた。新型コロナをめぐる「非常事態宣言」が近日中に発動されれば、相場の下落圧力が一段と強まるとの観測もある。

 ファッション業界にとってもショッピングセンター、百貨店、路面店への来店者数の減少、インバウンド客の激減、売れ筋在庫の不十分と、最悪な環境に置かれている。2月25日、山東如意傘下のSMCPも、中国における売上と利益率は深刻な打撃を受けたと発表。感染拡大で終焉が見えないなか、希望的な見通しは持ちにくい。

まとめ

「一寸先は闇の夜」とは「上方かるた」にある言葉である。まさに現状は見えないゆえに

 不安は広がる。しかし朝の来ない夜はなく、夜明け前が最も暗い。過多な情報に振りまわされないで、自分たちにできる最善の策はなんなのかを考えてみよう。逆に普段、見えていなかった何かが見えるかもしれない。一生懸命考えれば知恵が出る。生き残る者は、変化する者である。全社的に業務の流れや体制を見直す機会にするのも一考かもしれない。意志あるところには、必ず道が開かれるのだから。

(文=たかぎこういち/タカギ&アソシエイツ代表、東京モード学園講師)

たかぎこういち/タカギ&アソシエイツ代表/東京モード学園講師

たかぎこういち/タカギ&アソシエイツ代表/東京モード学園講師

カギ&アソシエイツ 代表/スタイルアドバイザー/コンサルタント(ファッション視点からの市場創造)/東京モード学園ファッションビジネス学科講師

1952年、大阪生まれ。奈良県立大学中退。大阪で服飾雑貨卸業を起業。22歳で単身渡欧後法人化代表取締役就任、1997年香港に渡り1998年、現フォリフォリジャパングループとの合併会社取締役に就任。オロビアンコ、マンハッタンポーテージ、リモワ、アニヤ・ハインドマーチなど海外ファッションブランドをプロデュースし、日本市場の成功に導く。また、第1回東京ガールズコレクションに参画。米国の有名ファッション展示会「d&a」の日本窓口なども務めた。時代に沿ったブランディング、MD手法には定評がある。2013年にファッションビジネスのコンサルティング会社「タカギ&アソシエイツ」を設立。著書に『オロビアンコの奇跡』『超入門 日・英・中 接客会話攻略ハンドブック(共著)』(共に繊研新聞社)、『一流に見える服装術』(日本実業出版社)、『アパレルは死んだのか』(総合法令出版)『アパレル業界のしくみとビジネスがしっかりわかる教科書』(技術評論社)などがある。
コンサルタントのタカギ&アソシエイツ

Instagram:@kohichi.takagi

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