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また、経営統合によるシステムの一本化など、多くの資金が必要だ。一例をあげると、12年、みずほフィナンシャルグループ(FG)はシステム開発のために2500億円程度をつぎ込んだといわれているが、IT管理にかかるコストを、ブロックチェーンを用いることで削減できると期待されている。ブロックチェーンは小型コンピューターのネットワークを使って、取引のデータ(元帳)を「分散管理」する。複数のコンピューター間でのデータ確認、同期化を行うことでデータの正確さを短時間で判定し、複数拠点での管理が可能になる。これによって、大型コンピューターの運用に必要な予算を削減できると考えられている。
報道によれば、MUFGコインの導入によって海外送金などの手数料が従来よりも安くなるようだ。それは、ブロックチェーンを使うことで、コストを削減できた分だけ顧客の負担を軽くできるということだ。これをみても、MUFGコインの本質は、ブロックチェーンを使ったコストの削減にあることは明らかだろう。
また、仮想通貨はフィンテック技術の一つである。多くの金融機関がフィンテックに注目し、事業の強化を進めている背景には、ブロックチェーンを用いてコストカットを進めたいという動機があるからだろう。銀行以外にも、証券取引所や保険会社がブロックチェーンを用いて、低コストかつ効率的に、取引データなどを管理しようとしている。フィンテックの本質は収益追求よりも、ブロックチェーンを用いたコストカットにあるといえる。
今後もブロックチェーンを用いて金融機関の経営にかかる費用を圧縮しようとする動きは進むだろう。特に、日本やユーロ圏では、マイナス金利政策の導入によって国債の流通利回りが低下し、金融機関は以前に増して収益を上げづらくなっている。MUFGコインの登場、その普及が銀行のブロックチェーン導入の起爆剤になる可能性もあり、今後の動向を注意深く見守りたい。
(文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授)
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