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大戸屋、コロワイドと全面抗争へ…「自己都合で不適切な形で子会社化を強行」と非難

文=松崎隆司/経済ジャーナリスト
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窪田健一・大戸屋HD社長

 経営再建中の大戸屋ホールディングス(HD)は5月25日、都内で記者会見を開き、経営陣刷新を求める筆頭株主のコロワイドに対して徹底抗戦していくことを明らかにした。コロワイドは昨年、大戸屋HDの創業者一族から株式を取得し約19%の筆頭株主となり、経営陣の刷新とセントラルキッチン導入や食材調達・物流網の共有化で経営の効率化を進めていくことを表明していた。

 これに対して大戸屋HDの窪田健一社長は、「本日の当社取締役会にて、コロワイドからの株主提案に対して反対する意見を決議しました」とした。

「反対する理由はいくつもありますので、詳細は本日発表したプレスリリースをご覧いただければと思いますが、私から断言できるのは、『大戸屋の未来』を創るのは現経営陣であり、株主提案には『大戸屋の未来』はないということです」(窪田社長)

 どういうことなのか。

「株主提案では、セントラルキッチン導入などで単純にコストカットするという、コロワイドの『自己都合の対策』以外に、企業価値をどうやって向上させていくのか、まったく示されていません。コロワイドの都合でセントラルキッチンが導入されれば、料理の味や鮮度などの品質が低下し、大戸屋の店内調理による良さを完全になくしてしまうものだと考えます。当社でも、これまでに聖域なく経営改善を検討する中で、セントラルキッチンの可能性について検討済みですが、当社においては効率化やコスト削減につながらず、かえって深刻な顧客離れにつながると考え、セントラルキッチンの採用はしないと判断しております」(窪田社長)

 さらに窪田社長は、コロワイドの買収手法は大戸屋の株主にとっても有利なものではないという。

「コロワイドからは、当社株主に対して、どのような条件・方法で子会社化を進める方針なのか、まったく示されていません。それにもかかわらず、コロワイドからは、TOBでは十分なプレミアムを付けないと応募が集まらないことから、まずは株主提案で取締役会を支配する、その後に経営支配権を取得する目的で第三者割当増資を実施する意向だと言われています。株主提案が通ってしまえば、このような不適切な形で一方的な子会社化が強行され、株主の皆様の利益が害されることを強く懸念しています」(窪田社長)

取締役選任の株主提案

 さらにコロワイドは今株主総会で現任の大戸屋HD取締役5名を含む12人の取締役選任を株主提案している。

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 このなかでまず大戸屋HDの現任の取締役である代表取締役社長・窪田氏、取締役・山本匡哉氏、社外取締役・三森教雄氏、池田純氏、戸川信義氏の5名については、取締役候補についての事前の了解を得ていなかったという。またコロワイド側の社外取締役候補者である小濱直人氏、河合宏幸氏、田村吉央氏、鈴木孝子氏の4名についても、候補者たちと意見交換するために面談をコロワイドに申し入れたが、「コロワイドからは面談に必要な各候補者の連絡先の開示を拒まれており、実現していません」(窪田社長)という。

 なお、コロワイドの株主提案には創業者の故三森久美氏と同じ三森姓が2名いる。一人は久美氏の実兄にあたる三森教雄氏で、現任の社外取締役であり現経営陣を支持していると見られる。もう一人は久美氏の実子にあたる三森智仁氏で、現経営陣と激しく対立し「お骨事件」を引き起こして2016年に大戸屋HD取締役を辞任している。今回、コロワイドに株を譲渡し、コロワイドと組んで大戸屋HDの取締役への返り咲きを狙う構えだ。

 こうした状況のなかで大戸屋HD側は次のように結論づけた。

「株主提案側の取締役候補が企業価値向上のための具体的な経営戦略や子会社化の方法・条件を示さず、子会社化するという結論ありきで迫ってくるコロワイドのやり方を容認していることからも、大戸屋のことを真に理解しているとはいいがたい状況です」(窪田社長)

 では大戸屋HDは今後どのような経営を進めていくのか。

「中期経営計画では、『世界一美味しいごはん屋さん』という、大戸屋のありたい姿に向けて、大戸屋の未来を創るために、2つのことを明確にしました。ひとつは、私たちの独自性であり最大の差別化要因である店内調理という強みは絶対に変えないということ。もうひとつは、お客様のニーズに合わせて、メニュー・店舗・販売チャネルなどを徹底したお客様目線で進化させていくということです」(窪田社長)

 こうした新たな改革をやり抜き、3年後の2023年3月期には286億円の売上、9億6,000万円の経常利益、ROE5.6%を目指すという。

大幅なスクラップ&ビルド

 大戸屋HDでは今回、世代別に約3000人の利用者アンケート調査やインタビューを実施。都心部と郊外、都市部と地方など地域により事情が大きく異なることが浮き彫りになり、チェーン店としての一律対応ではだめだということが明らかになったという。これまで大戸屋HDは「健康的で美味しいごはん」をコンセプトに、メニュー数90種類、店舗面積50坪(60席)、客単価は880円程度で全国一律、国内350店舗、海外120店舗を展開してきた。

 しかし、これまで一律に展開していた店舗を「ビジネス立地」「駅前住宅・商業立地」「ショッピングセンター・ロードサイド立地」の3タイプに分類。ランチ客の多い「ビジネス立地」には「街大人スタイル」としてメニュー数を30に絞り込み、店舗面積は50~60坪、客単価は800円程度に抑える一方で、ボリュームのあるメニューなども開発していくという。またオペレーションは従来の7~8人(厨房・ホール)から5~6人でも対応できるようにするという。

「メニューを大幅に絞り込むことで店内のオペレーションがスムーズになり、さらにコストダウンが図れる」(大戸屋HD広報担当者)

 さらに「駅前住宅・商業立地」向けの「新定番スタイル」ではメニューの種類は30プラスアルファで、客単価は830~850円程度、30~50円でトッピングメニューを充実しバリエーションを広げていく。家族などを意識した10人掛けのテーブルなども用意するという。

「ショッピングセンター・ロードサイド立地」向けの「テーブルスタイル」は、メニューを40種類、店舗の広さも60~70坪(60~80席)とかなり広めの店舗を展開。客単価も1000円以上を見込んでいるという。

 さらに新業態として男性層のニーズを汲み、大盛りサイズを売りにした「燦々三かみ」や、女性で賑わう立地を狙いパスタ、スープ、焼き立てパンなどを売りにした「kakomi」などの展開も進めていくほか、テイクアウトの比率を拡大。冷凍食品の販売にも進出する。

 さらに大幅なスクラップ&ビルドを行い、2021年3月期中に12店舗を閉鎖。回復が見込める店舗についてはリニューアルなどを進めていくという。

 果たして6月の株主総会で大戸屋HD経営陣は、新しい経営施策でコロワイドの株主提案を押し返すことができるのか。6月の株主総会は目が離せない。

(文=松崎隆司/経済ジャーナリスト)

松崎隆司/経済ジャーナリスト

松崎隆司/経済ジャーナリスト

1962年生まれ。中央大学法学部を卒業。経済出版社を退社後、パブリックリレーションのコンサルティング会社を経て、2000年1月、経済ジャーナリストとして独立。企業経営やM&A、雇用問題、事業継承、ビジネスモデルの研究、経済事件などを取材。エコノミスト、プレジデントなどの経済誌や総合雑誌、サンケイビジネスアイ、日刊ゲンダイなどで執筆している。主な著書には「ロッテを創った男 重光武雄論」(ダイヤモンド社)、「堤清二と昭和の大物」(光文社)、「東芝崩壊19万人の巨艦企業を沈めた真犯人」(宝島社)など多数。日本ペンクラブ会員。

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