カジュアル衣料店ユニクロを運営するファーストリテイリングの株価が7月15日、商いを伴って急反発した。終値は制限値幅の上限(ストップ高)水準の前日比5000円(18%)高い3万2660円となった。
ファストリ株がストップ高となったのは2009年10月以来、6年9カ月ぶりのことだ。一銘柄で日経平均株価を196円押し上げた計算となる。7月15日の日経平均株価は111.96円高の1万6497円だったから、ファストリが押し上げた分を他銘柄が帳消しにしたことになる。その後も株価は堅調で、3万3000円前後で推移している。ちなみに7月29日の終値は前日比520円高の3万3430円だ。
7月15日付日本経済新聞記事では、「ユニクロ成長に天井感 国内で客足戻らず 値下げ半年海外戦略にも影響」というネガティブなトーンだった。
ところが、マーケットの受け止め方は日経新聞とは真逆だ。野村證券は7月15日付のリポートで「ユニクロ復活」として、投資判断を「ニュートラル」から「買い」に一段階引き上げ、目標株価を3万5500円とした。大和証券やモルガン・スタンレーMUFG証券、ゴールドマン・サックス証券なども目標株価を引き上げた。
日経新聞の報道がネガティブだと、「アク抜け(悪材料出尽くし)」となって株価が反転するというジンクスが兜町にはあるが、今回はこのジンクス通りの展開となった。これに対して日経が前向きに伝えたケースで、「材料出尽くし」といわれ株価が反落するケースもある。日経の業績報道の影響力は絶大ということなのかもしれない。
ファストリは7月14日、16年8月期第3四半期累計(15年9月~16年5月)の連結決算(国際会計基準)を発表した。本業の儲けを示す営業利益は、前年同期比23%減の1458億円。16年8月期(本決算)通期の営業利益見通しも27%減となる1200億円に下方修正し、決して芳しい内容ではなかった。
野村證券は、何を根拠に「ユニクロ復活」と判断したのか。それは、第3四半期(16年3~5月)連結決算で、営業利益が市場予測を大きく上回ったからだろう。市場予測は前期比2割減の320億円だったが、営業利益は18.6%増の464億円となった。大幅減益の第2四半期から一転、2ケタの増益に転じた。マーケットは、この変化率の大きさを買いの材料にしたわけだ。
「ユニクロ復活」判断は時期尚早?
最大のサプライズは、国内ユニクロ事業の売上高総利益率(粗利益率)が改善したことだ。国内のユニクロは原材料費の高騰を理由に、15年まで2年連続で秋冬物などの値上げを実施した。「安くないユニクロ」が客離れを起こし、既存店の客数は前年割れが続いた。
それが、コスト削減によって売上高販管費率が下がり、粗利益率は5ポイント改善した。足を引っ張っていた海外ユニクロ事業も4割の営業増益となった。価格戦略の失敗で迷走を続けていたファストリは、ようやくどん底から抜け出し、業績が反転したと判断した投資家が買い出動した。
株価が大幅に上昇したとはいえ、1月の年初来高値(4万2200円)からは17%安い水準にとどまる。「ユニクロ復活」を国内外に宣言するには、16年8月の本決算の数字で証明しなければならない。
日本銀行が上場投資信託(ETF)の買い入れ額を年3兆3000億円から6兆円に引き上げた。1日の購入額が従来通り350億円程度なら、3日のうち2日は買う計算になるともいわれている。
日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)などに連動するETFの構成銘柄から計算すると、6兆円の資金はファストリやKDDI、ソフトバンクグループにそれぞれ2000億円前後入ることになる。ファストリにとっては時価総額の6%に当たる買い需要が期待できることになりそうだ。
(文=編集部)