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大塚家具、業績底打ち気配→新型コロナで深刻な打撃…反対にニトリは驚異的な好業績

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
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大塚家具本社(「Wikipedia」より)

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、大塚家具が深刻な状況に陥っている。臨時休業や外出自粛で既存店売上高が激減。3月が前年同月比14.8%減、4月が26.5%減だった。新型コロナの影響がほとんどなかった2月は0.1%減と微減にとどまっていたが、一気に落ち込んだ。

 新型コロナの影響もあり、2020年4月期単独決算は厳しいものとなった。最終損益は77億円の赤字だった。最終赤字は4期連続。20年4月期は16カ月の変則決算のため単純比較はできないが、赤字幅は過去最大となった。売上高は348億円で、12カ月決算の前の期(373億円)を下回った。営業損益は76億円の赤字(前の期は51億円の赤字)だった。

 新型コロナ前も厳しい状況が続いていた。20年4月期の16カ月間で既存店売上高が前年を上回ったのは昨年9月のみ。それ以外の15カ月は、すべて前年割れだ。特に10~12月の落ち込みが大きく、減少率はそれぞれ20%台にもなる。ただ、続く今年1月は7.2%減、2月が0.1%減と、落ち込みはそれほど大きくもなく、その後は上向くかに見えた。だが、そうしたさなかに新型コロナが直撃した。本来、新生活需要で3月と4月は売り上げが大きい月だけに、落ち込みは大きな痛手となった。

 キャッシュの流出も深刻だ。営業活動で稼いだお金の流れを示す営業キャッシュフロー(CF)は、20年4月期は69億円のマイナスだった。1カ月あたり4億円強が流出したことになり、前の期(18年12月期、2億円強)から大きく拡大した。もっとも、株式の発行などによる資金調達でキャッシュは上積みできている。だが、こうした資金調達には限界がある。そのため、営業CFのプラス化が欠かせない。つまり、販売を上向かせる必要がある。

 ただ、成果が期待される施策が新型コロナの影響で潰されかねず、予断を許さない状況に置かれている。その施策とは、ラグジュアリー家具の強化だ。

業績回復の切り札「ラグジュアリー家具」の販売に大打撃か

 大塚家具は商品のグレードを大きく4段階に分けている。ソファで考えた場合のグレードは、70万円超を「ラグジュアリー」、30~70万円を「プレミアム」、10~30万円を「アフォーダブル・プレミアム」、10万円未満を「アフォーダブル」としている。ラグジュアリー家具は最上級のグレードとなる。

 大塚家具は販路によって扱うグレードが異なる。直営店ではラグジュアリーからアフォーダブルまで幅広く扱う。大塚家具は家電量販店最大手のヤマダ電機の傘下に入り、同社との協業で家具と家電を販売するコラボ店舗の展開を始めたが、そこではラグジュアリーを除いたプレミアムからアフォーダブルまでを扱っている。ラグジュアリーに関しては、ドイツの高級家具ブランド「ロルフベンツ」やイタリアの高級家具ブランド「プルトローナ・フラウ」を専門的に扱う小型の店舗でも販売する。

 ラグジュアリー家具は販売が上向いていた。そうしたこともあり、ラグジュアリー家具の扱いを強化してきた。最近では、高級輸入家具販売のサァラ麻布から家具販売事業を譲り受け、今春に大塚家具の一部店舗で「サァラ麻布」ブランドのコーナーを設けて販売を始めている。サァラ麻布はラグジュアリーに該当するが、同ブランドを扱うことで大塚家具直営店における同グレードの強化を図っている。

 こうしたラグジュアリー家具の強化が業績を回復させる切り札になりつつあった。だが、新型コロナで雲行きが怪しくなってきた。新型コロナの影響はプラスとマイナスの両面があるが、ラグジュアリー家具など高級家具を扱う大塚家具の場合、マイナス面のほうが強く影響する可能性が高い。特にラグジュアリー家具の失速が懸念される。

 プラス面は、消費者の在宅時間が伸びることで家具や家電を買い替える人の消費が期待できることだ。新型コロナを受けた外出自粛や在宅勤務の広がりにより、自宅で過ごす人が増えているが、それに伴い、過ごしやすい部屋にするための家具の需要が活発化しているのだ。

 この需要で売り上げが伸びているのが、競合の「ニトリ」だ。6月度(5月21日~6月20日)の既存店売上高は47.4%増と驚異的な伸びを見せているが、机や椅子といったホームオフィス家具や棚やボックスといった収納・整理用品が好調だったという。3~5月度も堅調に推移している。過ごしやすい部屋にするための消費が活発化したようだ。大塚家具もこうした消費による売り上げの底上げが期待できる。

 ただ、ニトリが好調なのは、高品質の家具を圧倒的な低価格で販売するニトリだからこそという面が強く、大塚家具が同様に売り上げを伸ばせるかは別の話となる。では、大塚家具が売り上げを伸ばせるかというと、それは難しいと言わざるを得ない。

 ニトリが好調なのは、新型コロナによる消費者の節約志向の強まりが大きい。節約志向の強まりにより、それまでニトリを利用しなかった人が低価格の家具を求めてニトリを利用するようになったケースは少なくないだろう。

 一方、それまで大塚家具を利用したことがなかった人が新型コロナを機に高級家具を求めて大塚家具を利用するようになったケースは極めて少ないといえる。景気拡大期であれば、こうしたケースは増えるだろうが、景気後退が見込まれるコロナ後は、これとは逆のことが起きるだろう。特にラグジュアリー家具はより厳しくなるのではないか。こうしたことから、ニトリと同様の効果を大塚家具には期待できない。

 大塚家具の場合、過ごしやすい部屋にするための消費の高まりによる影響よりも、節約志向の強まりによる買い控えや外出自粛による影響のほうが大きくなる可能性が小さくない。これは新型コロナによるマイナス面の影響といえるだろう。

 大塚家具はこうしたマイナス面がプラス面を大きくなるのではないか。そして好調だったラグジュアリー家具が下火になる可能性が高い。また、ヤマダ電機との協業もどうなるかわからない。そのため、今後も厳しい状況が続きそうだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に勤務。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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