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コロナ下で利益4割増のダイフクとは何者?トヨタやユニクロを支える隠れた世界一企業

文=編集部
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ダイフク HP」より

 物流機器大手のダイフクが“コロナ相場”を牽引した。株価は3月中旬の直近安値4670円から、4カ月後の7月10日に1万520円と2.2倍にまで上昇。時価総額は初めて1兆円の大台に乗った。コロナ後を見据えて物流施設などの投資が出始めていることから買われた。

 ダイフクの2020年4~6月期の連結決算は、売上高が前年同期比18.5%増の1139億円、営業利益は40.9%増の90億円、純利益は41.4%増の73億円だった。いずれも4~6月期として過去最高。多くの企業がコロナの影響で4~6月期決算で赤字に転落するなかで、ダイフクは大幅な増収・増益となった。

 インターネット通販市場の拡大を受けて、倉庫内で商品を運ぶための搬送装置の需要が通販企業向けに増えた。商業・小売業向けは、EC(電子商取引)関連が牽引し、受注高は1.6倍の277億円、売上高は1.5倍の255億円と大きく伸びた。

 下代博社長は8月6日の記者会見で、ネット通販向けの需要拡大について「大手通販サイトの顧客から配送センターの注文が続いている。韓国ではネットスーパー向けが伸びている」と語った。コロナ禍による影響が懸念されている空港向け設備は「もともと3~4年かかる。急に受注が止まることは少ない」と説明した。

 ダイフクは07年に空港事業に参入。M&A(合併・買収)を活用しながら手荷物の搬送機器からセルフ型のチェックイン機器や空港情報システムなどに幅を広げてきた。今年2月、日本航空と共同開発したセルフ手荷物チェックインシステムを羽田空港に納入した。空港事業を自動車工場、半導体関連向けに次ぐ新たな収益源に育てる。しかし、コロナの感染拡大で国内外の旅行客が激減。「空港の設備投資が減退するのでは」と懸念された。

 しかし、空港事業の4~6月期の受注高は前年同期比17%増の105億円、売上高は17%増の104億円でコロナの大きな影響はなかった。21年3月期には売上高を500億円規模に引き上げる。自動車工場向けの受注高は16%増の151億円、売上高は44%増の184億円と堅調だった。21年3月期通期の業績見通しは、受注高は前期比0.7%減の4800億円、売上高は3.7%増の4600億円、純利益は3.3%増の290億円と従来予想を据え置いた。年間配当も75円と変更しなかった。

 8月7日の株価は一時、前日比330円(3.3%)安の9720円まで下げた。4~9月期の受注高の予想を2400億円から2000億円に下方修正したことが嫌気され、売りが先行した。21年3月期の受注高の予想(4800億円)を変えなかったことについて、証券アナリストは「コロナの長期化による未達リスクは否定できない」と指摘した。

搬送装置「マテリアルハンドリング」

 ダイフクは1937(昭和12)年5月、坂口機械製作所として大阪市西淀川区に設立された。戦後の47年に大福機工、84年にダイフクに社名変更した。当初は製鉄機械やクレーンをつくる産業機械メーカーだった。

 転機は1957年。トヨタ車体の工場に自動車のボディを搬送するチェーンコンベアを納入した。その翌々年、トヨタ自動車工業が元町に建てた日本初の乗用車専用工場にチェーンコンベアを納入。トヨタとの協働がマテハン(マテリアルハンドリング)の技を磨くきっかけになった。マテハンとは生産拠点や物流拠点の原材料・仕掛品・完成品のすべての段階に関わることをいう。

 完成車メーカーの生産ラインの自動化に関わり、日本におけるモータリゼーションの普及、海外への輸出拡大に歩調を合わせて、ダイフクは世界事業を拡大してきた。自動車産業や半導体装置メーカーなどの工場内で、モノの保管・搬送・仕分けシステム「マテリアルハンドリング」では世界トップだ。

 コロナの影響で、半導体のエレクトロニクス分野の4~6月期の受注高は15%減の313億円、売上高は10%減の333億円と落ち込んだ。代わってネット通販を中心とした物流業界向けの自動化システムが伸びた。「新型コロナウイルスの感染を予防しながら事業を続けるには、人と人との接触を極力減らさなければならない」との考えが広がった。新型コロナ感染拡大で需要が伸びたEC事業者が効率的な物流の構築に動いたことが、ダイフクにとって追い風となった。

ファストリと提携、倉庫の全自動化を実現

 ユニクロを運営するファーストリテイリングは2018年秋、ダイフクとパートナーシップ契約を結んだ。まず有明倉庫に最新鋭の自動化設備を導入し、商品の取り出し作業などを自動化。作業員を9割減らし、注文から出荷までの時間を最短15分に短縮した。

 ただ、柔らかい洋服はロボットでつかむのが難しく、品質を保つため人力に頼っていた。そこで、昨年11月、ロボット制御システムを開発するMUJIN(東京・江東区)、小型ロボットを使った自動物流システムを手掛けるフランスのExotec Solutionsの2社とユニクロは提携した。MUJINの制御システムを使うとロボットに細かい動きを教えなくても洋服の形状を理解し梱包する。Exotecは自分で荷物を仕分けするシステムに強みを持つ。これで、衣料品の自動倉庫システムがほぼ実現することとなった。ファストリは今後、1000億円を投じ、2~3年で日本や中国、米国の倉庫を自動化する。ダイフクは倉庫の全自動化の一翼を担う。

 ポストコロナの時代、生き残りのキーワードはIT化といわれるが、ダイフクを支えているのはデジタル化の波だ。ダイフクの「株価1万円、時価総額1兆円」は決して一時的な現象ではない。

(文=編集部)

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