1月23日にトランプ米国大統領は、TPP(環太平洋経済連携協定)離脱の大統領令に署名をした。これにより、米国がTPPから離脱することが確定的になったが、この大統領令にはある重大な内容が含まれている。まず、外務省が発表している「米国通商代表に対する大統領覚書『TPP交渉及び協定(合意)からの米国離脱』仮訳」は次のようになっている。
「全ての交渉において、特に米国労働者を含む米国民及びその財産上の福祉を代表し、彼らの利益にかなう経済的に利益のある貿易協定を作っていくことは、自分の政権の政策である。
さらに、自分の政権は、これらの成果を確実にするため、個別の国と直接、一対一(又は二国間)で、今後の貿易協定を交渉していく考えである。他国との貿易は、自分の政権及び米国大統領として自分自身にとって最重要であり、これからも常に最重要であり続ける。
これらの原則に基づいて、かつ、合衆国憲法及び米国の法律により大統領である自分自身に与えられた権限によって、自分は、貴通商代表に対して、米国がTPPの署名国として離脱し、かつ米国が永続的にTPP交渉から離脱するとともに、米国の産業を振興し、米国の労働者を保護し、及び米国の賃金を上げるために、二国間の貿易交渉を可能な限り追求するように指示する。
貴通商代表は、米国がTPPの署名国として離脱し、かつ、TPPの交渉プロセスから離脱する旨、TPP締約国及び寄託者に対して、書面による通知を適切に発出するように指示される。
貴通商代表は、本件覚書を連邦官報に公表する権限が与えられ、かつ指示される。」
この大統領令は、単なる宣言ではなく、米国の貿易交渉を担っている米通商代表部(USTR)代表に対する指令となっている。そして、同部に対して、「米国がTPPの署名国として離脱し、かつ、TPPの交渉プロセスから離脱する旨、TPP締約国及び寄託者に対して、書面による通知を適切に発出する」とともに、「米国の産業を振興し、米国の労働者を保護し、及び米国の賃金を上げるために、二国間の貿易交渉を可能な限り追求する」ことを指令しているのである。
前者の指令は、TPPに定められている正式な離脱手続き、すなわちTPP締約国に対する書面による離脱表明を指示したものであり、これによってTPPは完全に発効できないことになった。