創業家の狙いは、昭介氏の息子の取締役就任
米通信社のブルームバーグは2月10日付の記事で、「出光の創業家の新しい代理人に弁護士の鶴間洋平氏が就任した」という関係者の話を伝えた。鶴間氏は1996年に慶應義塾大学大学院を卒業し、2000年に弁護士登録。現在、寺本法律会計事務所のパートナーを務めている。
創業家の代理人となった鶴間氏が経営側との交渉のテーブルに座る。落としどころに関して、関係者の見方は一致している。「創業家から取締役を1人出す」ことだ。
15年12月に昭介氏は浜田氏を通して、創業家の見解として月岡隆社長に文書を提出。その中で、出光家から取締役1人を登用するよう求めた。
出光は06年の株式公開後、出光一族の役員は1人もいなくなり、創業家が経営に口を挟むことはなくなった。そのため、月岡社長をはじめとする経営陣は「創業家の影響力はほとんどなくなった」と読み誤った。
月岡社長は「役員就任」の要求を無視。16月6月の株主総会に向けた役員候補に創業家一族の名前はなかった。これに激怒した昭介氏は、浜田氏を代理人に立て、合併反対の狼煙を上げた。
昭介氏と千恵子夫人の間には2人の息子がいる。長男の正和氏と次男の正道氏で、共に出光の発行済み株式の1.5%を保有している大株主だ。正和氏は出光を離れ、創業家の資産管理会社で筆頭株主の日章興産の代表取締役となっている。正道氏は出光に在籍しているが、管理職にはなっていない。2人の処遇に不満を持つ昭介・千恵子夫妻が、息子たちをもっと重用しろと迫ったわけだ。
今度は、経営側が真剣にボールを投げ返さなければならない。
月岡社長が辞表を懐に入れて創業家を直接説得し、正和氏か正道氏を役員、それも常務以上に就ける妥協案を早急に示すしかないとの意見が多い。「役員にするなら次男の正道氏だろう」(出光興産の関係者)との声もあり、筆頭株主である日章興産の代表取締役である正和氏の可能性はないと見られている。
今年も6月末に株主総会が行われる予定だ。5月までには、新任の取締役候補を決めなければならない。月岡社長は、創業家側から役員を受け入れることができるのか、経営者としての器が問われることになる。
(文=編集部)