日産自動車は2月23日、4月1日付でカルロス・ゴーン氏(62)が社長を退き、後任社長に共同最高経営責任者(CEO)の西川廣人氏(63)が就任するトップ人事を発表した。
ゴーン氏は代表権のある会長に専念する。同氏は2000年6月から社長を務めており、17年ぶりのトップ交代となる。
西川氏は16年11月から共同CEOとなり、日本には年間100日もいないゴーン氏を補佐してきた。西川氏はゴーン氏より1歳年上で、今回の人事は若返りにはならない。
ゴーン氏の社長交代には伏線があった。同氏は1月に日本経済新聞で『私の履歴書』を連載した。日産の社長として一区切りつけたいとの思いがあったのかもしれない。
ゴーン氏は1999年、日産が経営不振に陥り傘下に入った仏自動車大手ルノーから送り込まれた“コストカッター”として知られ、経営不況に陥っていた日産の業績をV字回復させた。2001年にCEO、03年には会長を兼務し、文字通りワンマン体制で日産の経営をリードしてきた。
新年早々、“トランプ・ショック”が襲い、ゴーン氏にとって17年は受難の年になるとみられていた。雇用を守り「米国第一主義」を掲げるドナルド・トランプ米大統領は就任早々、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を表明し、日本自動車メーカーのメキシコ事業のリスクが顕在化した。
NAFTAとは、米国、カナダ、メキシコ3カ国が相互に市場を開放し、自由貿易圏をつくるための地域協定。94年1月に発効し、08年1月に関税が完全に撤廃された。メキシコで生産した工業製品は北米にフリーパスで輸出できる。しかも、メキシコの人件費は米国の6分の1程度と安いため、日本のメーカーは自動車・同部品を中心に生産拠点をメキシコに相次いで移転した。日産、トヨタ自動車、本田技研工業(ホンダ)、マツダが工場を建設するなど、自動車メーカーの進出ラッシュとなった。
米国のNAFTA見直しで192億円減益か
そんな日系メーカーのなかで、米国がNAFTAから離脱することでもっとも大きな影響を受けるとされているのは、日産だ。メキシコに進出した日本の自動車メーカーのパイオニアが日産だからである。
日産は59年にメキシコに進出し、生産台数はメキシコでトップ。メキシコ自動車工業会(AMIA)の発表によると、16年1年間の生産台数は、日産が84万8088台(生産シェア24.5%)で1位。以下、米ゼネラル・モーターズ(GM)の70万3030台(同20.3%)、フィアット・クライスラー・オートモービルズの45万9116台(同13.2%)と続く。