「買っていいのか、売り時なのか、さっぱりわからない」
投資歴数十年の東海圏在住の個人投資家のぼやきは、多くの市場参加者に共通するところだろう。今年に入ってからの東京株式市場は、いっそう膠着感を強めている。平均株価は2万円を目前にしており、指標だけを見れば堅調に映るが、日々の変動率は小さく、値幅を取るのは容易ではない。
このような時、ひと昔前ならば、低位株、材料株が乱舞するような局面がよくみられたものだが、その気配はない。市場のIT化と監視の強化によって、「仕手株」「仕手筋」が死語になりかけているからだろう。知人のデイトレーダーは「スリリングな展開になるまでは休養」という。なるほど、格言通りに「休むも相場」で処するのが正解なのかもしれない。
ただ、平均株価が2万円の大台を目前にしていることに焦点を当ててみると、今後の相場を占う上で、興味深い事実が浮かび上がってくる。
市場では平均株価が1000円ごとに、その水準を超えていくことを台替わりと呼ぶ。1万円は大台替わりになるわけだ。ベテランの証券関係者ならば、数字の0をドタと呼び、吉数として好んだ記憶があるのではないか。個別銘柄でも3桁から4桁へ、4桁から5桁へと、台が替わることで、株価の水準そのものが上方修正されやすいためであろう。
これを利用して相場の地合いや、今後の方向性を予測する手法がある。チャートやPER(株価収益率)のようにポピュラーなものではないが、1990年代初頭のバブル相場の崩落を予想して名を馳せた吉見俊彦氏(当時山一證券)が活用していたものだ。
国内最強の買い本尊
バブルの崩壊以降、現在までに日経平均株価が2万円の大台を回復したことは3回ある。
最初はバブル以降の最高値を記録した1995年から翌年にかけて、2度目はITバブルのピークだった2000年の春、そしてアベノミクス相場の第一波である15年央だ。それぞれ1万8000円台に乗せた日を起点に1万9000円、そして2万円と大台替わりまでに要した日数を調べてみると、立会日ベースで56日、78日、46日だった。過去3回は1万8000円台に乗せてから、概ね3カ月以内に大台越えを果たしたことになる。