●「Xperia Z」は「スーパースマートフォン」?
2月下旬にスペインで開かれた展示会「モバイルワールドコングレス」。ソニーのブースに展示されたのはスマホ「Xperia(エクスペリア)Z」。モバイル事業を担当する執行役の鈴木国正氏が「スーパースマートフォン」と報道陣の前で宣言した。
エクスペリアZは、ソニーにとっては新機軸の製品であるのは確かだ。これまでスマホ事業で足かせになったのが、開発体制。スウェーデンに本社を置いていた携帯電話の合弁子会社「ソニー・エリクソン(現ソニーモバイルコミュニケーションズ)」とは組織間の壁もあり、意思疎通が十分でなかった。ソニーが保有する画像処理や音声技術、ソフトの資産をつぎ込めないジレンマがつきまとった。
転機となったのが12年2月の完全子会社化。事業部間の垣根が低くなり、社内のリソースを存分につぎ込めるようになった。その第一弾が「エクスペリアZ」だ。
●ドコモもソニーを“異例の”プッシュ
社外からの評判も上々だ。1月、都内で開かれたNTTドコモの春商品説明会。「イチ押しの商品」とドコモの加藤薫社長は「Z」を手に言い切った。キャリアの社長が特定製品を推すなど前代未聞だろう。
発売以降、「iPhone 5」を抑え、スマホ市場で国内首位を堅守する。海外でも従来機種の価格の見直しが奏功した部分もあり、シェア2位の地域も出てきた。それでも証券アナリストの見方は冷淡だ。「世界市場ではアップル、サムスンで5割以上のシェアを握る。ソニーは3位集団だが、シェアは5%にも満たず。大手2社への対抗策が見えにくい」
加えて、中国勢などの追い上げも厳しく、「離れた3位」の確保すら容易ではないのが現状だ。中国のファーウェイは前年比88%増の6000万台の出荷を見込む。新興国で拡販するほか、欧米、日本にも攻勢をかける。韓国LG電子も前年比5割増を見込む。
両社が主戦場とするのが新興国の廉価品だ。彼らが武器とするのが「100ドルスマホ」。基本ソフト(OS)「Firefox」を搭載した低価格スマホだ。ファーウェイやLG電子は今夏にも実用化する。
●廉価版で台頭する中韓勢
スマホ業界は今後も成長が見込めるが、すでに成長が鈍化傾向にある。米ストラテジー・アナリティクスの調べでは、13年の世界全体の出荷台数は前年比36%増。11年の同64%増、12年の同43%増に比べると、伸びは鈍化し始めたことがわかる。各社が強気な計画を打ち出すほど市場は成長段階にあるとは言い難く、シェア争いが激化し始めた今、価格競争に陥る火種がくすぶり始めている。
ソニーは機種数を高価格帯に絞り、競合にはない音楽やゲームなどのコンテンツ資産を活用して戦いを挑む姿勢を打ち出している。「Firefox OS」端末の開発に乗り出しており、14年の市場投入を目指すが、あくまでも重点地域は先進国。報道によると、日本や欧州に集中的に資源を投入しシェアを拡大、北米や中国などに横展開していく戦略を描いているという。