2014年12月に国土交通省が実施した調査によると、宅配便で1回目完配、つまり1回の訪問で配達が完了し再配達が生じない割合は全体の80.4%、不在配達1回の完配率は15.7%、2回は同2.6%、3回以上は同0.9%だという。国交省は、1年間の不在配達に約1.8億時間が費やされ、1日の平均労働時間を8時間、年間労働日数を250日と設定した場合、年間9万人の労働力に相当すると試算している。
インターネット通販などのECの拡大、ドライバーの人手不足、夫婦共稼ぎ世帯の増加――。これらが再配達問題を表面化させたのだが、遠因は宅配便の仕組みに潜んでいる。ECを例にとると、宅配便の流通過程は主にEC事業者→物流会社→届け先で構成されている。配達を阻害する要素があると、このフローがスムーズに流れない。
2500のEC事業者と十数社の物流会社をインターネット上でマッチングするプラットフォーム運営会社、オープンロジ社長の伊藤秀嗣氏は、次のように説明する。
「再配達の問題がクローズアップされているが、それは宅配便の課題の一部であると認識している。荷物に記入された届け先の郵便番号が間違っていると、物流会社の集荷ベースの仕分けによって異なる営業所に配達されてしまったり、他の管轄エリアに回され越境発送となったりする。また、集荷された後にEC事業者から発送キャンセルが入ったり、届け先の住所の部屋番号が抜けていたり、届け先が長期不在という場合や、商品が汚破損されて返品されるとか、その都度、EC事業者と物流会社とのやりとりでFAXや電話などのオペレーションコストがかかる。そういう非効率を解決していかないと、宅配便にかかるコストは個数に比例して上昇するばかりだ」
さらにEC店舗の仕組みにも問題があるという。
「多くの店舗の画面で注文確定のレイアウト位置がコンバージョンを優先したかたちになっていて、ユーザーが商品の受取場所や受取日時を指定してから、注文確定をクリックするという構成になっていない。また、郵便番号と住所が不一致のまま注文確定をクリックして、返品につながっている場合も一定の確率で起こる」(同)
こうした実態を踏まえて、まず問われるのはEC事業者と物流会社の連携である。届け先に関する情報はEC事業者が入手するので、両者が情報を一元管理する仕組みが構築されれば、再配達を削減する有効な手段となる。