中国人の“爆買い”は終わったのか。いや、実は越境EC(電子商取引)を通じて爆発的な購買は続いている。
経済産業省によると、日本から中国への越境ECの市場規模は約1兆円。20年には約2兆円に達する見込みだという。最大手はアリババグループの「天猫国際(Tモールグローバル)」だ。ほか、網易(ネットイース)の「考拉海購(コアラ)」などがしのぎを削る。
そんな市場で異彩を放っているのが、インアゴーラが運営する越境ECプラットフォーム「豌豆(ワンドウ)プラットフォーム」だ。「ショッピングに国境はない。」をスローガンにする「ワンドウ」は、唯一の日本商品に特化した越境ECサイトである。商品の魅力を掘り下げてドキュンタリー映像で伝えるという手法で注目を集め、味の素やカゴメなどの大手企業が続々と協業を発表している。
中国人に日本の商品を爆買いさせるインアゴーラの狙いは何か。代表取締役の翁永飆(おう・えいひょう)氏に話を聞いた。
「メイドインジャパン」は高品質の代名詞
――現在、中国人の越境ECをめぐる状況はどのようなものでしょうか。
翁永飆氏(以下、翁) トータルで市場規模は伸びています。もし、日本に「アマゾン国際」「楽天国際」のようなサービスがあれば、意識せずとも越境ECは普及していくでしょう。
中国では、越境ECサイトを利用することで、日本だけでなく欧米や韓国の商品も短期間で届く仕組みができあがっています。そのため、中国人は越境ECを意識することなく、ECのひとつとして活用しています。
アリババの「Tモール」の中に海外商品を販売する「Tモールグローバル」があります。「海外の紙おむつがほしい」というときには、アマゾンと同じように検索して購入ボタンを押せば数日で届きます。
関税や在庫などの“裏事情”については、中国人はあまり関心がありません。越境ECや質の高い日本商品は、もはや生活の一部であり、特に難しく考えることなく接しています。
――「ワンドウ」とライバル企業の差別化については、いかがですか。
翁 ワンドウが取り扱っているのは、日本の商品のみ。「メイドインジャパン」は、欧米の商品より使い勝手がよくて気が利いている。そんなイメージの代名詞になっています。
マンションに家族で住んで、電車に乗って会社に通勤する……現在の中国人のライフスタイルは、日本人と共通点が多いです。そのため、日本の商品はあらゆる面で中国人の生活にフィットしています。
しかし、重要なのは、いかに日本の商品が魅力的であっても、商品の説明文を掲載するだけでは売れないということ。弊社では、商品の材料、歴史、つくり手の思いをもとにシナリオをつくり、ドキュメンタリー映画のように映像化して「物語」を演出。消費者である中国人に向けて、映像で商品の魅力を紹介しています。
日本人であれば「この商品はいいよ」ということを見聞きして知っているものですが、中国人には何の情報もありません。そのため、日本の商品について、日本人と中国人の間には情報格差が生じているのです。その差を埋めるために、商品を一つひとつ映像化して発信しています。
その映像を見た中国人が「この商品はいいんだ」「ほしいな」と思えば、購入につながります。他社の越境ECサイトとの差別化は、ここにあります。
また、他社でも日本の商品を扱っているところはありますが、特化しているわけではないため、サイト上では海外商品と同列に扱われます。イメージとしては、我々が日本の商品の専門ストアで、他社は総合ストアのような感じです。