中国人、京都を占拠!マンションに大型バスで乗りつけ問題多発、ごみ散乱、ロビーにたむろ
ここ数年、国内の主要観光地に行くと、周りから中国語の会話が聞こえてくることが珍しくなかったが、今年に入り、その勢いはますます加速している。日本政府観光局の発表によると、2014年に来日した中国人観光客は約241万人だったが、今年はすでに約428万人を数えている。
中国からの観光客が激増した理由には、いくつかの要素が考えられる。
まず、日本政府は今年1月に中国人観光客に対する数次ビザ(短期滞在ビザ)の発給要件を緩和した。それまで求めていた日本への渡航歴要件を廃止し、日本側身元保証人からの身元保証書などの書類要件を省略したのだ。
また、従来「十分な経済力を有する者とその家族」としていた経済要件も緩め、「一定の経済力を有する、過去3年以内に日本への短期滞在での渡航歴がある者とその家族」についても数次ビザが発給できるようにした。
加えて、円安の進行がある。11年には1人民元=12円程度だった為替レートは、14年後半には1人民元=19円前後となり、現在も同水準で推移している。中国人にとって、ご近所である日本での観光や買い物は、非常にお得感があるというわけだ。
さらに、春秋航空をはじめとする格安航空会社による日中間の就航便の増加も大きい。春秋航空が発行しているチケットは、行き先や時期にもよるが、片道3000円前後と非常に安値である。
こういった背景が、訪日中国人観光客増加の追い風になっていることは間違いないだろう。
中国人の増加でウィークリーマンションの賃料が暴騰!
ところで、筆者は京都が好きだ。物書き稼業という性質上、比較的自由に時間を使えることもあり、年に数回は京都を訪れ、1~2週間の短期滞在を楽しんできた。
しかし、いくら短期とはいえ、ホテルに連泊すると宿泊費がバカにならない。ゲストハウスに泊まれば安いが、共同生活のようで自由度が低くなってしまう。そこで、筆者はウィークリーマンションに目をつけた。
通常、ウィークリーマンションはワンルームであれば1日の賃料は4000円前後が相場だ。しかし、「空き部屋を遊ばせておくのはもったいない」と考える不動産業者が、半額ほどに値下げをすることがある。筆者は、そういった機会を狙うことでウィークリーマンションを安く借りてきた。時には、1日の賃料が1200円ということさえあった。
ところが、今年に入っていきなりウィークリーマンションの賃料が高騰し始めたのである。また、契約手数料や日割りの光熱費など、それまで不要だった費用もかかるようになってしまった。それどころか、部屋そのものの空きがほとんどなくなってしまったのだ。いずれも、昨年まではなかった現象だ。
筆者が懇意にしている不動産業者の担当者は、電話口でこう言っていた。
「とにかく、中国からのお客様が多くて、すぐに部屋が埋まってしまうんです」
訪日外国人観光客の増加で慢性的なホテル不足が伝えられているが、今やウィークリーマンションまで極端な需要過多になっているわけだ。そして、その背景に中国人観光客の増加があることは間違いない。
民泊はホテル不足解消の救世主となるか?
10月に行われた規制改革会議で、安倍晋三首相は、民泊(空き部屋などを宿泊施設として外国人観光客などに提供すること)の拡大に向けた規制緩和を検討する指示を出した。それを受けて、大阪府議会では全国で初めて民泊を承認する条例を可決している。同様の動きは、ほかの自治体でも加速するといわれている。
観光立国を目指す政府は、16年に1800万人、東京オリンピックが開催される20年には2500万人の外国人観光客を受け入れることを目標としている。順調に推移すれば、この数字を達成することはできそうだが、懸念されるのはホテルをはじめとした宿泊施設の不足だ。民泊の拡大には、そういった背景がある。
従来、民泊といえば、個人が民家に泊めてもらうこと全般を指していた。広い意味では、友達の家に泊まることも民泊であり、旅先でたまたま知り合った人の家に泊めてもらうことも民泊といえた。
しかし、近年はとらえ方が変わり、旅行者を有償で受け入れるビジネスモデルが登場している。最近話題になっている民泊は、そういったケースだ。
部屋提供側と宿泊希望者側のマッチングサービスも現れた。その最大手が、ウェブサイトの「Airbnb」である。同サイトでは、すでに日本国内で2万軒近くが宿泊施設として登録されているという。
しかし、民泊の拡大は新たな不安も生んでいる。京都市のマンションでは、近隣住民から「大型バスが乗りつけ、外国人が頻繁に出入りしている」「ごみの出し方が不適切」「ロビーに多くの外国人がたむろしている」など多くの苦情が、市や警察に寄せられていることが報じられた。
京都の「花見小路通」は「国際通り」に……
京都市を訪れる外国人宿泊客数は、13年の113万人から、14年は183万人と前年比60%以上の伸びを見せている。
筆者の知り合いの京都人は、皮肉まじりにこう漏らしていた。「最近、あの界隈は“国際通り”と呼ばれているんですよ」
「あの界隈」とは、祇園の中心を貫く「花見小路通」のことだ。風情あふれる石畳や格子窓が京都らしさを醸し出す、おしゃれなエリアである。京都でも屈指の観光スポットであり、京都を訪れたほとんどの人が足を運ぶ場所といっていい。そんな京都を代表する場所が、増加した外国人観光客によって“占拠”されてしまっているのである。なかでも目立つのは、やはり中国人だ。
残念ながら、しばらくの間、京都に安く連泊するのは難しそうである。
(文=青木康洋/歴史ライター)