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東電、プロパンガスのニチガスと危険なタッグ…悪質営業で裁判沙汰、国に苦情殺到

文=編集部
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東電、プロパンガスのニチガスと危険なタッグ…悪質営業で裁判沙汰、国に苦情殺到の画像1東京電力ホールディングス・川村隆会長(ロイター/アフロ)

 東京電力ホールディングス(東電HD)が危険な賭けに出た。プロパンガスを手がける日本瓦斯(ニチガス)と都市ガスの卸販売で折半出資の新会社を設立したのだ。すでに東電はニチガスが直販する都市ガスの原材料を供給しており、今回は関係を深めたかたち。

 だが、電力村から聞こえてくるのは「皇族とヤンキー娘が交際しているようなもの」と「お付き合い」の先行きを懸念する声が渦巻いている。果たして、業界を震撼させる「ヤンキー娘」のふるまいとは――。

悪評高い営業手法にも「フェイクニュースもある」とは

「耳を疑った」と語るのは経済部記者だ。8月3日、東電HD傘下の東京電力エナジーパートナー(EP)とニチガスが新会社を設立すると発表した会見の席上で、ニチガスのトップから思わぬ発言が飛び出したからだ。

 新会社は、首都圏で都市ガス事業参入を希望する事業者に、都市ガス小売りに必要なガスや保安サービスを一括で供給する事業を手がける。つまり、新規参入事業者に必要な物を丸ごと提供するというビジネスだ。

 冒頭の記者の驚きは、質疑応答で記者から飛び出したニチガスの営業手法にかかわる回答。「フェイクニュースのようなものもある」とニチガスの和田眞治社長は話し出したという。

 ニチガスは関東圏で都市ガスの導管が届かない地域でプロパンガスを販売しているが、直近10年で6割も顧客を増やしている。もちろん、これにはカラクリがある。

 前出の記者は「強引な営業手法はつねに業界では問題になってきた。だからフェイクニュースとは驚き。まさにその回答こそがフェイク」と指摘する。

 ニチガスのガス切り替えの勧誘員は歩合制。なんとか契約にこぎ着けようと、勧誘時に他社よりも安い料金を提示するものの、その後、消費者にわかりにくいかたちで値上げするなど不明瞭な契約や悪質営業手法が頻発。裁判沙汰になったケースもある。

「裁判では、自由競争下では安値で勧誘した後に値上げしても違法ではないとニチガスに有利な判決が下っている。結局、ニチガスはそれを根拠に営業姿勢を大きくは変えていない」(同)

 もちろん、業界内の評判は悪くても、消費者のメリットになれば問題ないが、今年になり消費者からの苦情も増えているという。背景にあるのが、今年4月の都市ガスの小売全面自由化だ。

 東京ガスなど既存の都市ガス事業者が地域ごとに牛耳っていた市場に参入が可能になり、ニチガスも家庭向け都市ガス販売に本腰を入れ始めた。それまでは東京ガスから原料調達を受け、都市ガスを販売していたがあくまでも一部地域にとどまっていた。

 自由化を機にニチガスは東ガスとの関係を解消、原材料を東京電力から調達し、これまで蜜月関係にあった東ガスの都市ガスを供給する地域に攻め込み始めている。

進まない全国のガス自由化を追い風に?

 当然ながら、正攻法では攻めていない。国民生活センターではガス小売全面自由化に対する相談は16年10月から12月の相談件数は14件だったが、今年1月から4月下旬までの相談件数は99件に増えている。関係者によると「ニチガス絡みがほとんど」で「現在契約中のガス会社の名称が変わると案内された」「地域を担当するガス会社が代わるとの説明により申込みを勧誘された」と詐欺まがいの手法が目立つ。

 ニチガスもさすがに危険を察知したのか社内調査に乗りだし、ホームページにお詫びを出したが、誤解を招きかねない営業は「1件のみ」というから驚きだ。

 役所から処分が下されてもおかしくないようにも映るが、都市ガス幹部は「残念ながらそれはありえない」と語る。

「今年4月に始まったガス自由化だが、全国で35万件にも満たない。切り替え率は割合にして1%台前半。特に最大の需要地の首都圏が6万件強とまったく伸びていない。首都圏でひとり気を吐くニチガスが営業を控えれば、関東圏のガス自由化はもはや『点火』が不可能になるだけに、大甘裁定が続いている」

東電が手にしたのは新たな火種なのか

 とはいえ、消費者の目線も厳しい今、東電にとってニチガスとの協業はリスクであることは間違いない。

「これまでは、ニチガスがいくら悪質な勧誘をしているといっても一プロパンガス業者にすぎなかった。だが、東電と組んだことで、ニチガスが営業現場で東電の名を出す可能性もある。そうなれば、大手紙の社会部が動き出す可能性もある」(週刊誌記者)

 東電は福島の廃炉・賠償費用が膨らみ、なりふり構わず「稼ぐ」必要がある。及び腰ながらもニチガスと組んだのは、その強引ともいえる営業力を買ったからだ。だが、それは原発事故以降、落ちた信用をどん底まで突き落とす火種を抱えたことでもある。
(文=編集部)

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