広告業界第3位のアサツーディ・ケイ(ADK)は、筆頭株主の世界広告首位の英WPPと対立、米投資ファンド、ベインキャピタルがホワイトナイト(白馬の騎士)として参戦した。三つ巴の攻防が繰り広げられることになる。
ADKは10月2日、WPPグループとの資本提携関係を解消すると発表した。提携開始から20年が経過したものの協業の具体策を見出せず、シナジー効果を発揮できなかったためだという。同日、ADKはベインの買収提案を受け入れ、株式を非公開にすると発表した。
ベイン系の投資ファンド、ビーシーピーイー マディソン ケイマン エルピーはADK株式のTOB(株式公開買い付け)を実施。1株当たり3660円で買い付ける。9月29日のADK株の終値を15%上回る価格で、総額は最大で1517億円に上る。買い付け期間は10月3日から11月15日までで、ベインはADK株の100%取得を目指しているが、TOB自体は50.1%以上の応募があれば成立する。東京証券取引所第1部に上場しているADKは、TOB後に上場廃止となる。
WPPのADK株保有比率は24.74%(6月中間期時点)。ADKもWPP株を2.43%保有しており、提携関係の解消に伴いWPP株をすべて売却する方針だ。
ADKは14年以降、円満なかたちで提携の解消を目指していたが、日本での足がかりを失いたくないWPPは首を縦に振らなかった。両社の対立が激化するなか、ベインがホワイトナイトとして登場。ベインがTOBを実施してADK株を非上場とするスキームを提案した。ADKはベインの100%子会社になり、WPPに退場してもらう。いったん上場廃止にした後、3年後をメドに再上場し、ベインは投下資金を回収するというシナリオである。
WPPはADKの一連の動きに猛反発。共同通信のロンドン発の記事(10月3日付)は、「WPPグループはTOBに応じるつもりはない。WPPはベインの提案した買収価格がアサツーの株価を『ひどく過少評価している』と判断した」という英フィナンシャル・タイムズの報道を引用した。
続いて第2位株主の英運用会社、シルチェスター・インターナショナル・インベスターズが10月4日、ベインによるADK買収に反対すると発表した。WPPと同様に、ベインが提示したTOB価格が著しく安いと主張している。シルチェスターグループはADK株の17.11%を保有している(6月中間期末時点)。
TOBの成立には50.1%以上の株主の応募が必要だ。筆頭株主のWPPと2位株主のシルチェスターの合計で41.85%を保有する株主がTOBを拒否したことになる。
監理銘柄になったADK株は、10月6日の終値が3850円だった。TOB価格の3600円を7%上回った。年初来高値は10月5日の3980円で、10年ぶりの高値だ。ベインがTOB価格を引き上げないと50.1%以上の応募は厳しいのではないかとの指摘が出ている。
TOB価格の引き上げを期待する買いが、今後も入る可能性は小さくない。なお、年初来安値は5月30日の2689円で、10月5日の高値と比較すると株価は5割近く上昇した。ベインはTOB価格の引き上げやTOB期間の延長を迫られることになる蓋然性が高まっている。