コンビニエンスストアの成長を支えてきたのは、絶え間ない機能やサービスの追加だった。公共料金の収納代行やATM(現金自動預け払い機)設置など、コンビニは新たな魅力を付加し、境界線にある市場や企業を侵食して、利用者を広げた。
だが、ここ2年、来客数は伸び悩んでいる。集客力を高めるために、新しい「ネタ」を付け加える必要に迫られている。
セブン-イレブン・ジャパンはソフトバンクと組み、コンビニの店舗をシェア自転車の貸し出しや返却の拠点にする。2018年度末までに首都圏や地方都市の1000店で5000台を設置する計画だ。
ファミリーマートは、コインランドリー事業に参入する。駐車場がある店舗を中心に、コインランドリー併設店舗を19年度末までに500店展開する。
両社の背中を押したのは、上述したように来店客数の低迷だ。日本フランチャイズチェーン協会が発表した10月のコンビニの既存店売上高(速報値)は、前年同月比1.8%減でマイナスは5カ月連続。来店客数は4.9%減で20カ月続けて前年同月を下回った。
業界関係者に衝撃を与えたのは、コンビニの王者・セブンの減収だろう。セブンの10月の既存店売上高は前年同月比で0.5%の減収となった。12年7月以来、63カ月ぶりに前年実績を下回り、客数も4.5%減少した。大型台風や長雨の影響で客足が鈍った。
だが、実は天候不順だけではない。セブンの変調は夏から起きていた。客数は7月に前年同月比で1.2%減に転じた後、8月1.6%減、9月1.2%減となっており、10月で4カ月連続の前年実績割れとなった。
「コンビニ事業でシェア50%に向けて邁進する」
セブンの親会社、セブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一社長は、今年4月の17年2月期の決算発表の席上で、こう宣言した。
17年2月期のセブンの業界シェアは42.7%。今後、さらに7ポイント強高めて過半のシェアを握るという。日販(1店舗当たりの1日の売上高)の圧倒的な強さが、その自信を裏打ちした。17年2月期のセブンの日販は65.7万円で、ローソンの54.0万円、ファミマの52.2万円に、10万円以上の大差をつけている。ファミマに看板を掛け替える前のサークルK・サンクスに至っては42.5万円にとどまり、まったく勝負にならない。
シェア50%を高らかに宣言したセブンの既存店売上高が前年割れとなり、来店客数は4カ月連続でマイナスになった。この事実がコンビニ業界に衝撃をもたらしたのだ。
他のコンビニ大手の落ち込みは、もっと激しい。ローソンの10月の既存店売上高は4.0%減、客数は5.0%減った。客数の前年実績割れは7月以降4カ月連続だ。
ファミマの既存店売上は1.2%減、客数は4.8%減。17年3月以降、既存店売上高は5月を除いて毎月、前年割れ。客数は4月以降、7カ月連続で減っている。
惨憺たる成績なのがサークルK・サンクスだ。既存店売り上げと客数の減少は8カ月連続。その結果、10月のチェーン全店の売上高は前年同月比58.6%減。前年より半減どころではない。穴が空いたバケツから水がこぼれ落ちるような惨状を呈している。ファミマがサークルK・サンクスとの統合を決断したことは、結果的に大失敗だったといわざるを得ない。
コンビニが誕生して40年余。「コンビニ5万店飽和説」が唱えられてきたが、5万店を突破しても右肩上がりの成長を遂げてきた。16年(暦年)の売上高は10.5兆円(日本フランチャイズチェーン協会調べ)。16年度のスーパーマーケットの売上高は12.9兆円(日本チェーンストア協会調べ)。スーパー業界の年商に迫り、小売業首位の座が射程距離に入っていた。
ところが、客足が遠ざかるという、思わぬ壁にぶち当たった。コンビニは、初めて“冬の時代”を迎えることになったのである。