「第2ロッテワールドタワーの建設では韓国空軍の滑走路の邪魔になり、軍が反発、計画は暗礁に乗り上げたが、韓国ロッテと懇意にしていた李氏が大統領に就任し、空軍基地の滑走路の向きを変えることで09年に許可が下りたのです」
この時、韓国ロッテ側から李氏に対して請託があったのではないかという疑いがあり、昭夫氏が活動の拠点としている韓国ロッテの中枢である政策本部をターゲットにソウル中央地検は捜査を進めていたという。
そんな最中に韓国ロッテグループは16年5月はじめ、系列の5~6社から崔順実(チェ・スンシル)氏が裏で設立・運営を主導していたスポーツ支援財団「Kスポーツ財団」の口座に、約70億ウォン(約6億7000万円)送金している。崔氏は韓国では朴槿恵(パク・クネ)前大統領を陰で操る“韓国の女ラスプーチン”として知られ、隠然とした力を持っていた。これがロッテの免税店事業認可を得るため、「Kスポーツ財団」経由で朴氏らに賄賂を渡したのではないかとみられていたが、強制捜査の前日に全額返済されていることなどから「捜査情報を事前に察知し、捜査を有利に進めてもらうために払ったが、結果としてうまくいかずに返されたのではないか」(事情通)とみる向きもある。
強制捜査が大詰めに入った16年8月26日、韓国ロッテグループ政策本部長で副会長、実質ナンバー2の李仁源(イ・インウォン)氏が自殺したことで事件の真相は闇に消え、ソウル地検は捜査方針を武雄氏による一族への株の贈与やグループ会社からの横領疑惑にすり替え、一族は16年10月在宅起訴された。この時、韓国ロッテグループはまさに捨て身ともいえるような戦略に出た。
17年2月には韓国南東部、慶尚北道星州郡に韓国ロッテが所有していた「ロッテスカイヒル星州カントリークラブ」の土地を、高高度迎撃ミサイルシステム「THAAD」配備のために韓国政府に提供することで合意した。これに対して中国政府は韓国に対する経済報復を行い、中国人の韓国への団体旅行は禁止。免税店を経営するロッテホテルやロッテマートは大打撃を受け、その「損失額だけで2兆ウォンを超える」(韓国ロッテグループ関係者)という。中国にあるロッテマート(112店舗)の事実上全店舗が営業停止に追い込まれた。