各社が宅配市場に続々と参入し競争が激化している一方で、配達時間の速さを競う競争も始まっているのが興味深い。食品がメインというわけではないが、アマゾンが15年11月から有料会員向けに商品を1時間以内に届けるサービス「プライムナウ」を一部地域で始めた。これに対抗してか、ドン・キホーテが17年2月から最短58分以内で配達する「マジカプレミアムナウ」を始めている。ドンキはアマゾンより2分早い時間を設定することで、配達の速さを際立たせようとしているようだ。
宅配時間短縮で交通事故が増加
他方、中国では30分以内で宅配する生鮮食品スーパーが人気を博している。中国のネット通販最大手、アリババ集団傘下の「盒馬(フーマー)鮮生」だ。実店舗とネット通販を融合したスーパーで、店舗から3キロメートル圏内の消費者であれば、スマホで商品を注文すると販売員が電動バイクで最速で30分以内に商品を届けてくれるという。
中国では宅配サービスがブームとなっている。中国国家郵政局によると、17年の中国全土の宅配便個数が前年比28%増え、400億個を超えたという。宅配が増加するに伴い、一部地域の道路では荷物を配達する電気スクーターや三輪バイクで溢れかえっているという。
このように中国では宅配市場が過熱し成長しているが、一方で大きな問題が起きているという。宅配時間をより短くするため宅配ドライバーが安全よりスピードを優先するようになり、他の車両や通行人との接触事故が多発し、多数の死傷者が発生しているというのだ。事故が多発していることを受けて、警察やメディアが宅配業者を非難するようになったため、宅配業者は対策を講じるようになり事故は減っているようだが、件数が0になることはないようだ。
ドミノ・ピザはこういった中国での事例を対岸の火事として見過ごすことはできないだろう。同社は15分・20分という極端に短い時間で宅配するサービスを新たに導入したわけだが、配達員が時間を急ぐあまり配達中に事故を起こしてしまうとも限らない。そのようなことになったら、同社の企業イメージは大きく損なわれてしまうことになるだろう。大事にならないことを祈るばかりだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。