ギャンブル依存症対策として、改正風営法がいよいよ2月から施行された。パチンコ・パチスロは健全な娯楽として新たな発展に向かうのか、あるいは衰退の道をたどるのか、注目される。
当面は経過措置がとられるため旧基準での機種投入が残るが、経過措置の期間におけるホール側の投資は、今後の方向性を探るきっかけになる。
出玉規制が強くなった新機種について、ホール側の投資がどう進むか、さらにユーザーがそれをどう受け止めていくかはパチンコ市場の今後を左右する。パチンコ・パチスロ機器メーカーだけでなく、機器に半導体など電子部品を供給するメーカーにとっても、当面はこれらの動きを見極めなければならない。
18年3月期は1~3Q大幅赤字だが、通期黒字見通し
こうしたなかで、パチンコ・パチスロ機器大手、SANKYOの2018年3月期第4四半期(1~3月)について、注目したい。
SANKYOの18年3月期業績は、第1~3四半期累計時点で売上高が前年同期比3割減となる31.8%減の461億9,700万円、利益は営業損益以下すべて欠損転落で、経常では18億6,700万円の赤字(前年同期は57億4,200万円の黒字)、最終では12億8,200万円の赤字(同34億1,700万円の黒字)となった。
にもかかわらず、通期予想では売上高は前期比で増収、さらに利益面では黒字確保はもちろん増益予想となっている(営業段階では減益予想)。通期予想は1月末に下方修正したばかりなのだが、それでも修正後で売上高はまだ対前期比3.1%増の840億円とみており、利益はすべて黒字で経常では50億円、最終では35億円となっている。逆算すると、第4四半期(1~3月)だけで378億円の売上と、47億円あまりの当期利益確保が必要となるのだが、可能なのだろうか。
風営法改正時期に当たる第4四半期に、なぜこのように集中した売上と利益をあげることができると考えているかというと、それはSANKYOが同期にヒット機種を含む多くのラインアップを一斉に市場投入するからである。
4Qにヒット機種含み9タイトルを一挙投入
SANKYOでは、第4四半期に集中してパチンコで一気に6タイトル、パチスロで3タイトルを投入する。第1~3四半期累計でパチンコ9タイトル、パチスロ3タイトルだったから、これまでの9カ月にほぼ匹敵する投入タイトル数となる。加えて、パチンコでは『フィーバー機動戦士Zガンダム』、パチスロでは『エヴァンゲリヲン』と、それぞれ人気タイトルを投入する。
第1~3四半期累計でSANKYOのパチンコ販売台数は8万台だが、第4四半期だけで8万4,000台の販売を見込み、パチスロも同様にここまで9カ月で1万8,000台だったが、第4四半期だけで1万1,000台を見込んでいる。
パチンコ・パチスロメーカーは、従来からヒット機種が出るときには多くの売上をあげ、その端境期には低迷するというのがよくあった。その経験則からすれば、こうした会社側の予想もうなずけるのだが、パチンコ・パチスロ市場が後退傾向のなか、さらに風営法改正という状況のなかではどうなるだろうか。同じようにホールが投資を継続するか、注目される。SANKYOの第4四半期に注目したいといった所以である。
ちなみに同期で投入する機種は、いずれも風営法改正以前の基準タイトルで、経過措置として認められているものとなっている。その意味でもホール側の考え方にひとつの結果が出ることになる。また、ここにきて旧基準機の各社投入が相次ぎ、保通協の型式試験が遅れているという情報もある。そうなると、来期へずれ込むリスクも出てくる。
今後SANKYOでは、当面の間は改正前の基準と改正後の基準の機種を織り交ぜながら市場投入していく予定になっている。新機種をなるべく先送りするのか、いち早く新機種に切り替えていくのか、そのあたりも重要となる。
(文=高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役)