「今、組織委(東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会)のなかで最大の障害は、開会式・閉会式と競技を観客ありでやるのか、無観客でやるのかが、いまだに決まっていないということ。開幕まであと2カ月しかない。観客のありかなしかで、会場の設備や運営、スタッフの手配をどうするのかなどが、全然変わってくる。本来であれば、最終的な細かい詰めの段階に入っていなければならない時期。ウチの上や政府は、我々現場に投げれば済むと思っているのかもしれないけど、かなりヤバい状況。特にあおりをモロに食らっている、開閉会式の運営に携わる部署の人たちは疲弊して、見ていても本当にかわいそうです。
コロナで国内世論ですら開催反対が強まり、延期ですでに多額の追加費用が発生しているなか、組織委内でも『そこまでして五輪をやる必要があるのか』『いったい何のために、こんな苦労をしているのか』という声が出ています」(組織委関係者)
政府は14日、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、北海道、岡山県、広島県に緊急事態宣言を発令することを決定し、これで同宣言の対象地域は東京を含む9都道府県に拡大。すでに沖縄県と岐阜県も同宣言の対象地域に加えるよう政府に要請している。
さらに「蔓延(まんえん)防止等重点措置」の対象地域も10県に拡大され、医療従事者や高齢者へのコロナワクチン接種の遅れも問題視されるなか、メディア各社の直近の世論調査では、五輪の延期・中止を求める声が6~8割に上るなど、開催反対の機運が高まりつつある。
しかし、菅義偉首相は今月13日、森田健作前千葉県知事との面会時に「五輪を目指す」と発言。丸川珠代五輪相も11日の記者会見で、「(五輪には)人々の間に絆を取り戻す大きな意義がある」「コロナ禍において東京大会は、世界中の人が新たな光を見いだすきっかけになる」と語り、政府からは五輪実施への強い意思が伝わってくる。
同一エリア内に50名前後の職員がデスクを並べ…
そして混乱のしわ寄せは、大会運営の担い手となる組織委の現場に集まっているようだ。組織委関係者はこう内情を明かす。
「同一フロアの同一エリア内に50名前後の職員が十分な間隔を空けずにデスクを並べて仕事をしている部署もあります。向かい合って着席する職員同士の感染防止のため、各デスクの上には職員一人ひとりの上半身と顔を覆うかたちで、真正面に箱状のパーティションみたいなものを設置するなど、一応対策は取られていますが、みんな箱に頭を突っ込んで仕事をしているみたいに見え、光景としてはかなり異様。さらにコロナ禍下でもオフィスに出社しての勤務を命令されている部署も多く、在宅勤務ができないため、職員の間でコロナ感染を恐れる声も広まっています」
こうした現状について、組織委の戦略広報課は当サイトの取材に対し、次のように回答する。
「東京2020組織委員会の業務体制につきましては、今夏に迫った東京2020大会の最終準備のため、原則出勤としつつも、各局室の業務状況に応じて、出社勤務割合の減は可能としています。現在も在宅勤務でできるものは在宅勤務制度を活用するとともに、三密防止のため時差出勤制度も積極的に活用しています。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぎ、職場における感染予防対策を徹底するため、産業医等の助言のもと、マスク着用、社会的距離の確保、手指消毒等の基本的な衛生対策の徹底を図るとともに、Web会議システムの活用促進についても周知を行い、引き続き、感染予防・拡大防止に努めつつ、大会準備を進めています。
上記産業医等の助言に基づく職場の感染予防対策を徹底したうえで、これらの業務体制については、弊会の新型コロナウイルス感染症対策本部(本部長:事務総長)で決定し、全職員に周知を行っています」
また、激務で職場を離脱する職員も出ているという。前出と別の組織委関係者はいう。
「職員が連日にわたり深夜0時近くまで勤務を強いられている部署もあり、過度の精神的なストレスで医師から出社禁止を命じられ休職中の職員も発生しています」
これについては組織委の戦略広報課はこう見解を示す。
「東京2020大会の最終準備のため、職場によっては超過勤務を実施している職員もいます。労働安全衛生法に基づき、職員の勤怠管理や所属長・産業医の面談を実施するなど、職員の健康については組織として安全配慮を行うとともに、衛生委員会等を通じて情報の共有や超過勤務の縮減にむけた取り組みを行っています」
ちなみに東京五輪・パラリンピックの競技および開会式・閉会式がもし無観客で実施された場合について、「組織委内部での試算によれば、組織委が被る損失は数十億円ほどになるという話も出ている」(組織委関係者)というが、いったい誰のための五輪なのだろうか――。
(文=編集部)