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新生銀行を核とする「第4のメガバンク構想」か…SBIが新生銀の筆頭株主に、警戒広がる

文=編集部
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SBIホールディングスが所在する泉ガーデンタワー(「Wikipedia」より)

 上場している地方銀行・グループ77社の2021年3月期決算は33社が最終減益、3社が赤字だった。20年3月期に最終赤字だった、みちのく銀行(本店青森市)、清水銀行(静岡市)、島根銀行(松江市)の3社は黒字転換したが、じもとホールディングス(仙台市)、東邦銀行(福島市)、福島銀行(同)の3社が赤字に転落。減益となった銀行の数は20年3月期の54社から33社に減ったが、依然として全地銀の4割を上回る。

 青森県を営業地盤とする青森銀行とみちのく銀行は22年4月に持ち株会社を設立して、2年後の24年に合併することで基本合意した。統合後の青森県内のシェアは7割となるが、20年11月に施行した独占禁止法特例法では「一定の条件を満たせば独占的なシェアになっても合併を認めている。青森・みちのくの両行の再編は特例法の適用第1号となる。持ち株会社が上場し、両行は上場廃止となる」(有力地銀の頭取)。

 店舗数と貸出残高は青森銀が95店で1兆8563億円、みちのく銀は94店で1兆7212億円。両行は規模が似通い永年のライバルだった。厳しい経営環境が合併の背景にある。2040年までの人口減少率で青森県は秋田県に続いてワースト2位の6.5%減。少子高齢化は全国トップクラスのスピードで進む。

 18年に金融庁が発表した「地域金融の課題と競争のあり方」で示された都道府県ごとの存続可能な地銀の数で青森県は、「県内1銀行でシェア100%になっても採算が取れない」と、実に厳しい評価を下された。

 みちのく銀が統合を決断したのは、公的資金200億円の返済期限が24年9月末に迫っているためだ。同行は08年のリーマン・ショック後の景気後退で経営が悪化。09年9月、金融機能強化法に基づいて公的資金が注入された。20年3月期連結決算で最終損益が46億円の赤字に転落し、上場地銀でワースト1位となった。自己資本比率(単体)も7.4%まで落ち込み、こちらはワースト2位。「公的資金の返済どころではない」(関係者)。

 新しく誕生する持ち株会社の本店はみちのく銀本店(青森市勝田)に。本社機能は青森銀本店(青森市橋本)に置き、「みちのく銀が青森銀に救済合併される」(東北地方の有力地銀のトップ)の印象を少しでも薄めようとしている。持ち株会社の社長には青森銀の成田晋頭取、副社長は藤澤貴之・みちのく銀頭取が就任する。みちのく銀は「中興の祖」と呼ばれた大道寺小三郎氏が経営トップの時代に、上位都銀に先んじて単独でロシアに進出し、消費者金融を手掛けた。大道寺氏は「破天荒のバンカー」「青森の古狸」と評せられた。

 05年、みちのく銀は3回目の業務改善命令を受け、「永年のワンマン体制の弊害」を指摘され、大道寺会長は引責辞任した。同年、80歳で憤死した、と地元ではいわれている。大道寺氏の拡大路線のツケが重くのしかかり、“宿敵”の青森銀の軍門に降ることとなったという見方もある。

福井銀、福邦銀を連結子会社に

 福井市に本店を置く地銀の福井銀行と第二地銀の福邦銀行は、福井銀が福邦銀を10月に連結子会社にする。福井銀が議決権ベースで福邦銀の株式の51.98%を握り親会社となる。福邦銀は09年、公的資金60億円の注入を受け、返済期限が24年に迫っていた。公的資金の返済が、みちのく銀行と同じで最大の経営課題となっていた。

 10月1日付で福邦銀が公的資金60億円を返済するのと同時に、福井銀が第三者割当増資を引き受け、50億円出資する。これで公的資金の返済問題をクリアできる。福井銀が福邦銀に役員を派遣するほか、両行で現在110カ所ある拠点を2割削減する。地域商社や人材派遣会社の設立を検討し、24年度末(25年3月)までに70億円の利益の押し上げ効果を狙う。

 日本銀行は再編を決めた地銀に対し、日銀に預けている当座預金の利子を年0.1%上乗せする制度を設けている。福井銀、福邦銀は6月に予定している福邦銀の株主総会後、この制度の適用を申請することを明らかにしている。菅義偉首相は昨年9月、自民党総裁選への出馬にあたり「地銀の数が多すぎるのではないか」と発言。独禁法の適用除外とする特例法の成立に向けて動いたとされる。

 菅政権誕生後、福井銀行と福邦銀行が資本提携で合意。福井銀が福邦銀を子会社にすることと、青森銀・みちのく銀の経営統合が、期せずして同じ5月14日に発表された。

SBIHDの“地銀連合”は道半ば

 SBIホールディングス(HD)は大臣経験者や官僚OBを次々に経営陣に迎え入れている。6月29日付で元財務省事務次官の福田淳一氏と元農林水産省事務次官の末松広行氏が社外取締役に就任する。元金融担当相の竹中平蔵氏は16年6月から社外取締役として名を連ねている。

 元金融庁長官の五味広文氏をボードメンバーにしたことがSBIHD社長・北尾吉孝氏流の「政官接近術」といわれた。五味氏は17~19年、社外取締役を務め、取締役退任後の今はアドバイザリーボードのメンバーである。さらに、SBIHDは出資先の福島銀行の社外取締役に五味氏を派遣した。お目付け役という位置づけなのかもしれない。福田氏を社外取締役に起用するにあたって「地域金融機関との連携で知見を活用させていただきたい」としている。

 SBIHDは「第4のメガバンク(地銀連合)」構想を掲げ、10行をメドに全国の地銀・第二地銀と資本・業務提携を進めている。19年9月、島根銀行(全国最小の第二地銀、本店松江市)、同年11月には福島県の第二地銀、福島銀行(福島市)に支援の手を差し伸べた。翌20年1月、福岡県下の地銀で福岡証券取引所に単独上場している筑邦銀行(福岡県久留米市)と資本提携した。

 静岡県の地銀、清水銀行(静岡市清水区)とは20年2月、群馬県の第二地銀、東和銀行(前橋市)は同年10月である。同年11月に山形県の第二地銀、きらやか銀行(山形市)、宮城県の第二地銀、仙台銀行(同仙台市)と手を結んだ。きらやか銀と仙台銀は2012年に経営統合し、じもとホールディングス(本社仙台市)となった。

 そして、本年5月14日、茨城県つくば市に本部がある地銀、筑波銀行と資本・業務提携すると発表した。筑波銀が8行目となる。筑波銀は10年、関東つくば銀行(土浦市)と茨城銀行(水戸市)が合併し発足した。筑波銀は11年、金融機能強化法に基づき350億円の公的資金の注入を受け、31年に返済期限を迎える。

 みちのく銀、福邦銀、筑波銀に共通するのは公的資金の注入行であるという点だ。第三銀行(三重県松阪市、公的資金300億円の返済期限は24年10月)は三重銀行(三重県四日市市)と経営統合し、三十三(さんじゅうさん)フィナンシャルグループ(三重県四日市市)に生まれ変わった。

 北都銀行(秋田県、公的資金100億円、26年4月返済期限)は荘内銀行(山形県鶴岡市)と経営統合し、フィデアホールディングスとなった。フィデアの本社は仙台市にあり、念願だった東北最大の金融都市、仙台への進出を果たした。公的資金の注入行は全国におよそ10行ある。公的資金の返還問題が地銀・第二地銀再編のキーワードとして急浮上してきた。

SBIHDは新生銀行株16.5%を保有する筆頭株主

SBIHDが進める地銀連合構想の本当の狙いが読めない」といぶかる金融関係者は多い。「第4のメガバンク」構想という位置付けだが、金融界では「弱者連合」という突き放した見方が大半。各地に点在する弱小地銀・第二地銀と資本・業務提携しても、メガバンクにはなれないからだ。

「地銀連合の核に新生銀行を据え、連合構想の機関車役にするのが真の狙いだ」(首都圏の有力地銀の若手役員)との読みが働く。新生銀の前身は1998年に経営破綻した日本長期信用銀行。優先株として注入された公的資金(3700億円、注入時)が、今もって完済されていない。

 19年8月、新生銀の筆頭株主だった米投資ファンド、JCフラワーズの持ち株の売却が完了した時点でSBIHDが動いた。新生銀の有価証券報告書によると20年9月中間決算時点の大株主の構成は預金保険機構が12.03%、整理回収機構が8.94%。SBIHDは12.0%だった。SBIは20年12月、議決権ベース(自社株を除く)で13.09%まで買い増し、預金保険機構(この時点で12.0%)を抜き筆頭株主に躍り出た。同年1月初旬の保有比率は5%程度だったから、積極的に買い増しを進めたことになる。

 3月30日に提出されたSBIHDの大量保有報告書によると、SBIHDの持ち株比率は16.5%にまで上昇した。自己株式を除いた議決権ベースでは19%超になっているとみられている。新生銀行グループがマネックス証券と包括的業務提携を発表したことが、SBIの買い増しのきっかけとなった、と関係者は分析する。新生銀は投資信託などマネックスの金融商品を取り扱うという。

 旧長銀が発行していた「リッチョー」や「ワリチョー」が営業面で地銀と密接な関係を築く上で大いにプラスになった。その“遺産”が新生銀には残っているとされている。新生銀を核に第4のメガバンクをつくり、SBIHDが大株主として君臨する――。これがSBIHDが描くシナリオなのか。地銀再編劇はまだひと山もふた山もありそうである。

(文=編集部)

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