遊び心は大切である。どんな些細なことでも“遊べる”ことはいいことだ。JRのICカード、Suicaに自由に名前を印字できることを知れば、好きなアイドルや有名人の名前、ふざけた名前などを、つい入れたくなってしまう。
<ある日「お!好きな名前つけられるやん!」って気づいて、自由な名前で作りました。で、払い戻しに行ったら、「これ、本名じゃないですよね。記名SUIKAは名前証明できなければ払い戻せません」だって! みんなも気をつけて! 3つの駅に行って聞いて全滅だったから確か!>
これは、ある人が6月21日深夜に発信したツイートだが、リツイート数は3万を超え、 以下のような投稿が寄せられていた。
<なんで払い戻しできないのに好きな名前を付けられる機能にしたのか>
<別の名前登録する発想力がなかっただけに、逆に付けたくなった>
<マジか…でも笑えるのは間違いない(笑)>
<推しの名前もダメということか>
<拾ったのを換金する人もいるし、まぁー>
そもそも、記名式なのに好きな名前が付けられるのはなぜか。Suicaには無記名式と記名式のカードがあり、無記名式は誰でも使えるが、記名式は記名本人しか使えない。無記名式は子どもが使っても大人運賃となるため、そもそもこども用はなく、小学生以下の子どもが使用する場合でも記名式カードとなる。
記名式のSuicaは駅のみどりの窓口か多機能券売機で購入するのだが、こども用だけはみどりの窓口で子どもの年齢などを証明する公的書類が必要になる。だが、大人用の場合はみどりの窓口でも多機能券売機でも身分証明書は必要ないのだ。
つまり、たとえば「ウンコ タレゾウ様」と印字されたカードもつくれるのだ。多機能券売機では氏名(ひらがな)、生年月日、性別、電話番号を打ち込むだけなので、好きな名前でつくれてしまうというわけだ。
しかし、本人のものではない名前が印字されたSuicaは、JR東日本のICカード乗車券取扱規則第15条と第16条により、払いもどしまたは紛失再発行する際は、「利用者が当該Suicaの記名人本人であることを証明した場合に取り扱います」という規定により、それができないのだ。
ちなみに、JR東日本に見解を尋ねると、次のような回答だった。
「払いもどしの際は、所定の申込書の提出と、記名がご本人であるかどうかの確認を行っているので、当該Suicaが本人であることを証明した場合に払いもどしができるようになっております。ご本人であると確認できないようなお名前か、ご本人以外の名前で登録してある場合には払いもどしには応じかねます。
今後についてですが、記名式のSuicaの取り扱いについては、弊社のICカード乗車券取扱規則というところに定めておりますので、特段なにか今後対応するということは検討しておりません。どれくらいの方が本名以外の名前で登録しているか、それについても把握しておりませんが、ご本人のお名前でご購入いただくのが大前提です」(JR東日本広報部)
Suicaの発行枚数は2018年5月末現在で7065万枚。本名以外の記名が入ったSuicaを利用している人がどれくらいいるのかは定かではないが、遊ぶならくれぐれも自己責任で行うことを肝に銘じたほうがよさそうだ。
(文=兜森衛)