東芝の2018年4~6月期の連結純利益(米国会計基準)は1兆167億円で、前年同期の503億円から急増し、4~6月期としては過去最高となった。
半導体メモリ子会社、東芝メモリの売却益を計上したことによる。6月に米投資ファンド、ベインキャピタルなどの日米韓連合に売却を完了した。
売上高は前年同期比7.3%減の8423億円。東芝メモリなき後の成長を占う営業利益は、わずか7億3000万円。前年同期の東芝メモリを除く営業利益132億円に比べると、94.5%減った。エネルギー事業などの苦戦が鮮明になった。
19年3月期の通期見通しは、売上高が前期比8.8%減の3兆6000億円、営業利益は9.3%増の700億円、純利益は1兆700億円とした。
4~6月期決算から浮かび上がってくるのは、売却した半導体メモリの存在感の大きさだ。17年まで、半導体関連部門の利益(システムLSIやハードディスクドライブを含む)は、多い時には1000億円を稼いでいた。ドル箱の半導体メモリを売却したことに疑問を感じている経済人は少なくない。
7月23日、東京国際フォーラムにおいて行われた「公認会計士制度70周年記念講演」で、ファーストリテイリングの柳井正・会長兼社長は、東芝メモリの売却について否定的な見解を述べた。
「最近話題になった会社(東芝)などは、最悪の例であると思っております。一番儲かっている半導体の部分を売って、時代後れの重厚長大の部分を残すという経営判断としては、どう考えてもおかしいです」
柳井氏の言葉が東芝に重くのしかかる。
「物言う株主」に屈し、7000億円の自社株買い
半導体メモリの売却資金が入り、18年6月末時点で、東芝の現預金や有価証券などを合わせた手元資金は2兆15億円。1年間で1兆4877億円増えた。
この豊潤なキャッシュに舌なめずりしているのが、昨年、増資を引き受けて東芝の株主となった海外ファンドなどの「物言う株主」だ。
東芝は、米国の原発子会社ウエスチングハウスと同グループの再生手続きによる損失など1兆2428億円の損失を計上、17年3月期に5529億円の債務超過に陥った。
債務超過を解消するため17年12月、6000億円の第三者割当増資を行った。増資に応じた60のファンドのなかには、旧村上ファンド出身者らが設立したシンガポールのエフィッシモ・キャピタル・マネージメントをはじめ、米エリオット・マネジメント、米サーベラスなど、うるさ型の物言う株主がいる。