9月6日午前3時8分、北海道胆振地方を震源とする震度7の地震が発生した。発生直後、震源地近くにあった北海道電力最大の火力である苫東厚真発電所(厚真町)の1、2、4号機がすべて停止。供給力の4割強が一気に喪失。北海道全域で電力が止まる“ブラックアウト”が起き、道内全世帯に当たる295万戸が一斉に停電した。
ブラックアウトの発生は、戦後の9電力体制(現在は沖縄電力を含めて10電力)がスタートして以来、初めてのことだ。
同日午前8時15分、世耕弘成経済産業相は「数時間以内に電力復旧のめどを立てるよう北電に指示した」と説明した。世耕氏の発言を受けて北電の真弓明彦社長は6日昼すぎ、「全道の電力の復旧には1週間以上かかる。すべての電源が落ちるリスクは低いと考えていた」と述べた。
ところが、同日午前、苫東厚真の4号機のタービン付近から出火。この火災により苫東厚真の完全復旧は11月以降にずれ込むことになった。
「『北電は意思決定が遅く、説明責任の意識が低い』。北電の対応にいらだちを募らせる経産省は、徐々に前面に出ていく。電気をたくさん使う企業への節電要請や計画停電の準備は、経産省が主導した」(9月13日付朝日新聞)
北電は事実上、経産省の管理下に置かれたことになる。世耕氏が北電のスポークスマンであり、真弓社長ら役員たちに指示する北電の最高権力者のようだと話題になった。
世耕氏は電力不足を解消するため、早い段階から計画停電に言及していた。計画停電とは、事前に用途、日時、地域などを定めて、電力の供給を一時停止することだ。しかし、計画停電は企業や家庭にかかる負担が大きい。工場など生産現場の実態を知らない官僚の机上の空論で、企業を殺す“劇薬”との批判が強い。
北電は19日、苫東厚真発電所1号機が再稼働したと発表。これを受けて、電力需要を1割削減するための節電要請は解除された。
債務超過転落の危機が再来
北海道全域で停電するブラックアウトをもたらした原因は、苫東厚真発電所への一極集中にあると指摘されている。だが、元をたどれば、かつてピーク時の電力需要の4割超を賄っていた泊原子力発電所(泊村)へとたどり着く。2011年の東日本大震災後、泊原発は安全性の審査が進まず、12年以降動いていない。
原発依存度が高かった北電は、経営危機に陥った。原発の稼働停止により、火力発電所の燃料費や他社からの電力購入費が急増。14年3月期の連結最終損益は629億円の赤字(前期は1328億円の赤字)と、3期連続の赤字になった。純資産は1467億円まで減り、自己資本比率は7.58%へと低下した。
15年3月期以降も赤字が続けば、純資産が底をつき、負債が資産を上回る債務超過になってしまう。経営破綻は時間の問題となった。