富士通は、携帯電話の販売会社を売却する。カーナビ、パソコン、インターネット接続、そして携帯端末の開発・製造に続く個人向け事業の売却だ。主力のIT(情報技術)サービス分野に経営資源を集中する方針を打ち出しており、携帯電話の販売事業の売却で、個人向け分野からの撤退がほぼ完了する。
売却するのは、携帯電話やパソコンなどの販売を手掛ける子会社、富士通パーソナルズの携帯販売ビジネス。NTTドコモ向け携帯端末を販売する「ドコモショップ」を、全国で100店舗以上展開している。富士通パーソナルズの2018年3月期の売上高は、法人向けのパソコン販売事業と合わせて1296億円。その半分弱が携帯電話の販売とみられている。売却額は300~400億円になる見通し。
富士通は今年1月、携帯電話端末の開発・製造を担う子会社、富士通コネクテッドテクノロジーズを国内の投資ファンド、ポラリス・キャピタル・グループに売却することを決めた。端末の開発・製造事業の売却により、自社で販売網を維持する意味が薄れた。
16年9月にカーナビ事業をデンソーへ売却し、17年1月にはニフティのネット接続事業をノジマへ売却すると発表した。さらに同年11月、パソコン事業を中国レノボに売却することを決定している。
今後、富士通パーソナルズは法人向けのIT機器販売に特化する。富士通の連結子会社の個人向け事業は、FDKのニッケル水素電池、PFUのスキャナーとキーボードだけとなる。
携帯販売代理店は商社系と量販店系に集約
携帯電話の販売代理店業界は再編の歴史だ。従来型の携帯電話からスマートフォンへの乗り換えが進んだことで端末も各社横並びになり、携帯電話会社(キャリア)は売り上げの大幅な伸びが難しい状況となった。キャリアは販売実績の良い販売代理店を一段と優遇し、販売手数料の効率化、削減を進めている。
こうした動きは、代理店にとって死活問題で、業界再編の機運が高まるのは当然の成り行きといえる。携帯販売代理店は大きく「商社系」「メーカー系」「地域・専業系」「量販・その他系」に分類される。
成長期だった頃は全国各地に地域・専業系が乱立していたが、成熟期に移行するにつれて、買収や資本参加により集約が進んだ。
メーカー系代理店が消えていくというのが大きな流れだった。自前の端末を売るためのメーカー系代理店は、親会社の端末事業の撤退に伴い売却された。富士通パーソナルズは最後に残ったメーカー系代理店といえる。