インターネット通販大手、楽天の株価が下げ続けている。4月25日には760円まで下げ、年初来安値を更新した。2013年1月以来、5年3カ月ぶりの安値である。13年の安値は1月4日の670円だった。
楽天は17年12月15日、携帯電話事業に参入し、基地整備局など設備投資資金として最大で6000億円を調達する計画を発表した。12月15日の株価は1011円。同年6月6日の1407.5円の高値から28%の下落だ。現在の株価は、12月15日の株価に比べて25%安、昨年の高値のおよそ半分だ。
総務省の諮問機関である電波監理審議会は4月6日、楽天への周波数帯の割り当てを決定した。これを受け総務省は4月9日、楽天の携帯電話事業への参入を認定したが、「計画実効性に疑問が残る」として異例の条件付き認可となった。同日の認定書交付式で三木谷浩史会長兼社長は無言で認定書を受け取り、笑顔はなかった。
NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクに次ぐ第4の携帯電話会社として、楽天は2019年10月にサービスを始めるとしている。
これに対する市場(マーケット)の評価は厳しかった。JPモルガン証券は投資判断を「オーバーウェイト」から「ニュートラル」に格下げ、目標株価も1300円から900円に引き下げた。株価の下落には歯止めがかからないのは、市場が第4の携帯電話会社に懐疑的だからである。このままでは株価の700円割れもあり得るという見方が出ている。
日本格付研究所(JCR)は格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。要因として「最大約6000億円の設備投資に伴う資金調達」や「厳しい競争のなかで利益を確保するのは容易ではない」点を挙げた。実際に格付けが現行の「A(シングルA)」から下がれば、4000億円と見込む金融機関からの借り入れの条件が悪くなる恐れがある。
マーケットや投資家は、楽天の携帯事業の成長戦略を不安視している。具体的な成長戦略を示していないからだ。「2028年度末に1000万契約」という目標だけが一人歩きしている。1000万契約を達成するには、先行する3社から顧客を奪うしかない。しかし、これは言葉にするのは簡単だが、容易なことではない。