――サブリース契約の「30年間家賃保証」は成立していたと思いますか。
坂田 基本的に30年間の家賃保証はうまくいかないと思います。近くに他社物件がなくて建物が老朽化しないのであれば可能かもしれませんが、実際には他社が参入するし、建物も古くなります。そうなれば、当初の家賃を30年にわたって保証するというビジネスモデルは難しいでしょう。入居者としては、同じ家賃であれば新築や住みやすいエリアの物件に住みたいと思うはずです。そのため、実際にはオーナーの家賃収入は年々下がり、差額はオーナーが負担を強いられることになってしまいます。
レオパレスの経営危機で連鎖倒産が発生?
――『「レオパレス21 国内取引状況」調査』の概要について教えてください。
坂田 レオパレスとレオパレスグループと直接取引のある1次、間接取引の2次の取引先数を調査しました。取引先総数は仕入先合計が2364社(重複除く)、販売先合計は306社(同)でした。直接取引している1次仕入先(615社)のうち、建設業が335社(構成比54.4%)と過半数を占めています。1次仕入先の本社地は、東京都151社(同24.5%)、大阪府51社(同8.2%)、神奈川県47社、愛知県と千葉県が各37社と、都心部に集中しています。レオパレスグループの取引先を資本金別で見ると、1次仕入先(615社)では1000万円以上5000万円未満が330社(構成比53.6%)と最多です。
――建設業の335社というのは工務店が多いと思われますが、今度はどう動くのでしょうか。
坂田 工務店側とすれば、値引きがなく案件が増えるとなれば積極的に受注し、一時的に潤う可能性があります。一方で、今のレオパレスの案件にはリスクも大きい。そのため、工事を断ったりレオパレス以外の受注確保に動いたりする工務店も出てくると思います。その場合、実際に新規の受注を確保できるかどうかが経営にかかわってきます。一社傾注型の工務店は元請の方針変更などに伴い受注がなくなってしまうケースもあり、実際にレオパレスの専属下請工事会社で倒産した事例があります。
――その倒産例を具体的に教えてください。
坂田 奈良県の企業が18年5月7日に奈良地裁に破産を申請し、同月18日に破産決定を受けました。レオパレスが関西地区で建築請負から賃貸事業をベースとしたビジネスモデルに転換したことから、関西地区での受注が減少したことが原因です。レオパレス以外の受注確保にも努めましたが状況は改善せず、最終的には実質的に代表者ひとりで運営していたようです。この事例を踏まえて考えると、工務店がいきなりレオパレス以外に「下請けにさせてください」とお願いしても難しいのが現実でしょう。