大和ハウス工業は、中国・大連市の住宅販売の関連会社で、約234億円の資金が不正に引き出された。中国の合弁先から派遣された取締役の中国人男性2人と出納担当者の中国人女性の計3人が関与したとみられるという。現地の捜査当局に業務上横領罪などで刑事告発する。
関連会社は大連大和中盛房地産有限公司。現地の建設会社、大連中盛集団有限公司との合弁で2005年に設立。分譲マンションの販売・開発を行っている。
取締役2人は合弁先の建設会社の元董事長(日本の代表取締役に当たる)とその息子で、出納担当者は元董事長の姪だった。
大和ハウスの説明によると、関連会社の経理担当者から3月12日、預金残高と帳簿で金額の差異があるとの報告を受けた。15年からインターネットバンキングを通じて不正に送金された形跡があり、約14億1500万元(約234億円)が使途不明になっていた。
3月7日に出納担当者の女性が会計書類を持ち出そうとしているのを現地社員が発見。それを機に女性が出社しなくなったことを怪しみ、帳簿などを確認して不正が発覚した。
合弁先の建設会社は昨年夏、関連会社が開発した物件を無断で譲渡していたことが判明し、大和ハウス側は合弁解消の方針を固め、両社の対立が深まっていた。
中国の関連会社は大和ハウスが83.65%を出資する持ち分法適用会社。全額が回収できないとの想定で約117億円のほか資産の評価損も生じ、計約130億円を持ち分法投資損失として計上する。
大和ハウスの19年3月期の連結決算は、訪日客の増加を追い風に、新幹線の沿線都市のホテル建設が好調だったことから、当初予想を上方修正していた。売上高は前期比6.7%増の4兆500億円、純利益は同1.5%増の2400億円と、それぞれ500億円、30億円増額した。
しかし4月19日、19年3月期の連結純利益が前の期比1%減の2350億円になりそうだと発表した。不適切な部材で住宅を建てた問題による営業損失を約20億円計上することも重なり、従来予想から50億円下方修正し、3期ぶりの減益となる。一方、売上高は前の期比9%増の4兆1200億円で、従来予想を700億円上回る。