今年の8月いっぱいで、全国の90%以上のコンビニエンスストアから「成人誌」が消える。2017年11月にミニストップが18年からの取り扱い中止を発表すると、セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートも続き、北海道のセイコーマートも取り扱いをやめる方針を発表したのだ。
一部には「表現の自由の侵害」などの批判もあるが、世間的にはおおむね好意的に受け止められているようだ。一方で、制作側にとっては死活問題となる。
前編では、ミリオン出版元社長で成人誌の編集にも長年携わってきた比嘉健二編集長に、業界の反応や過去の規制について聞いた。後編では、規制の背景や成人誌販売の今後などについて聞く。
規制の理由は本当にオリンピック?
――コンビニ各社の発表によると、「成人誌を扱わない理由」として、女性や子どもも来店する店内での陳列による苦情や、扱う女性従業員の精神的苦痛のほか、今秋のラグビーワールドカップ、来夏のオリンピック・パラリンピックなどで来日する外国人観光客への配慮なども挙げられています。
比嘉健二氏(以下、比嘉) 本当にオリンピックのせいなんでしょうか? それなら「オリンピックの期間中だけ店頭で売らない」でもよかったのではないでしょうか。「オリンピックが終わったら観光客に配慮しなくていい」わけでもないですよね。
そもそも今の日本の人気の中心は漫画やアニメで、あとは京都や浅草など昔ながらの観光地ですから、オリンピックはあまり関係なくて、後付けの理由のような気がします。これって、暴力団排除と同じですよね。誰かが「暴力はよくないからやめようよ」とか「いやらしいものはやめようよ」と言ったら、反論できないんです。
もともと人間は性的なものにも暴力的なものにも興味があるじゃないですか。今年の3月に亡くなった内田裕也も萩原健一も、野獣系というか「強い男」の代表だったけど、もうそういうスターはいませんよね。今は批判されるのが怖いんですよ。「暴力やエロもいいじゃねえか」なんて言ったら、「暴力的なアブナイ人」とか「スケベ」とか言われちゃうから、それを恐れているんでしょう。特に大企業はそうですよね。
――暴力の問題でいうと、コンビニの「成人誌」の基準があいまいなために、今後は成人誌だけではなく、「危ない企画」を掲載した実話誌なども自主規制の対象になる可能性も指摘されています。
比嘉 そうですね。もう少し、いろいろゆるくてもいいと思いますけどね。不良とかヤンキーの文化もおもしろいですよ。
――直接の暴力はダメですし、女性や子どもに優しい社会のほうがいいですが、マッチョでバカバカしい男の世界がなくなるのはさびしさもありますね。
比嘉 そうですね。温泉なんか、まさにそうです。1980年代のバブル期あたりまでは、温泉街は男たちのための歓楽街でした。芸者さんがいて、ストリップ劇場や秘宝館もあってね。それがどんどん寂れていくんですが、熱海など女性やファミリー向けにリニューアルしたところは、また人気が出てきています。