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4月~中小企業でパワハラ防止措置が義務化、周知進まず…言動を罰する就業規則も必須

文=Business Journal編集部
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”パワハラ防止法”の中小企業適用に関する厚生労働省の告知

 国の“パワハラ防止法”によって企業でのパワハラ防止措置を定めることが4月1日から義務化された。「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」の成立に伴って、改正された「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(新労働施策総合推進法)により、2020年6月1日からすでに大企業に対してパワハラ防止措置をはかることが義務化されていた。

 同法改正時の附則で定められていた「中小事業主に関する経過措置」の期間が終了したため、今後は中小企業もその対象となり、すべての企業でのパワハラは法規制の対象となった。しかし、この政府の法改正が中小企業関係者に周知されているとはいえない状況が散見され始めている。

「労働政策推進法とパワハラ防止措置」違反事業者は行政処分に

 改正された労働施策総合推進法の第9章「職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して事業主の講ずべき措置等」では、以下のように規定されている。

「第三十条の二 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

2 事業主は、労働者が前項の相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」(原文ママ、以下同)

 その上で、国や、厚労省から委託を受けた都道府県の労働局は規定に違反している事業主に対して報告を求めることや是正勧告を発出すること、また同勧告に従わなかったときは「その旨を公表する」としている。

 また、各企業による“パワハラ防止措置の報告”に虚偽の事実などがあった場合は、以下のように行政処分が下される厳しい内容となっている。

「第三十六条 厚生労働大臣は、事業主から第三十条の二第一項及び第二項の規定の施行に関し必要な事項について報告を求めることができる」

「第四十一条 第三十六条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、二十万円以下の過料に処する」

 前述のように大企業に関してはすでに施行済みなのだが、同法では中小企業が同法に適応するための経過措置を設けていて、今年3月31日までは「努力義務」だった。ここで言及されている“中小企業”とは、従業員50人以下もしくは「資本金または出資の総額」が5000万円以下の小売業、同100人以下もしくは同5000万円以下のサービス業、同100人以下もしくは同1億円以下の卸売業、同300人以下もしくは同3億円以下のそのほかの業種を指している。

 4月1日からは中小企業も含め、すべての企業は改めて従業員に対するパワハラ防止の周知徹底と、相談窓口の設置、経営者・従業員のパワハラに該当する言動を罰する就業規則や服務規程の整備が必要となるようだ。

「企業のパワハラ防止措置」義務化、「7割知らない」

 同法改正に合わせて厚生労働省が公表した資料によると、「職場のいじめ・嫌がらせに関する都道府県労働局への相談は7万2000件超(H29年度)で 6年連続で全ての相談の中でトップ。 セクハラの 相談件数は約7千件(H29年度)と高水準にとどまる」との現状を指摘。「ハラスメントのない社会の実現に向けて、職場のパワハラ対策、セクハラ対策を強化することが必要」とのパワハラ防止措置の義務化の趣旨を説明する。

 しかし、そもそも事業者がどれくらいこの制度を知っているのだろうか。

 東京都大田区の小規模機械機器製造業の経営者男性に、防止措置を準備したかを聞いたところ、「そもそも大企業でこれまで義務化されていること自体、今、初めて聞いた。確かに区からそんなような内容のパンフレットをもらったが、具体的に何をやればいいのかわかりません」と困惑したように話す。

 シンクタンクの「しゅふJOB総研」を運営するビースタイル ホールディングスが4月19日に公表した「ハラスメントに関するアンケート調査」(3月23~30日、インターネット調査、回答者684人・女性のみ)では、回答者の7割がこの法改正を知らないという結果が出ている。

 同調査で、「2020年から大企業にパワハラ防止措置が義務化され、2022年4月からは対象が中小企業に拡大されることについてご存知でしたか」との問いに対し、「詳しく知っていた」のはわずか1.8%、「ある程度知っていた」が27.6%にとどまり、ほぼ7割にあたる回答者が「あまり知らなかった」(31.7%)、「まったく知らなかった」(38.9%)と回答したという。

 また『法律による防止措置の義務化で、パワハラは減少すると思いますか』との質問には『思う』39.2%に対して『思わない』が53.5%、パワハラ被害経験者に絞ると『思わない』が6割を超えたという。

 同総研研究顧問の川上敬太郎氏は、調査結果について3割の人が法規制によるパワハラ減少を期待していることを強調した上で、「(パワハラ加害者が)無自覚だと、パワハラを法律で規制したとしても効果は限られてしまいます。誰もが加害者になる可能性があると認識した上で、指導・指示が押しつけになっていないか、意図は十分伝わっているかなど、相手の立場に立ったコミュニケーションに各自が注意を払うこと、また職場においては、研修などを通じて啓発することがパワハラ防止には欠かせないのだと考えます」と述べている。

(文=Business Journal編集部)

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