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ジャニーズ事務所、ジャニー氏の性加害「ほう助」か…民事訴訟なら多額の損害賠償も

文=Business Journal編集部/協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表
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ジャニーズ事務所

 ジャニーズ事務所の創業者で元社長、ジャニー喜多川氏(2019年7月に死去)による所属タレントへの性加害問題で、ついに同事務所が対応に動き出した。同事務所は取引先企業へ文書を送付し、社員や所属タレントにヒヤリング調査を行い問題が確認されなかった旨を報告。元所属タレント向けの相談窓口を設けたうえで個別対応を行う予定であるとしているが、ジャニー氏から被害を受けた元タレントが同事務所の経営責任を問うて民事訴訟などの法的手段をとった場合、損害賠償の支払いなどが認められる可能性はあるのだろうか。専門家に聞いた。

 事の発端は海外メディアの報道だった。今年3月に英国公共放送(BBC)が『Predator: The Secret Scandal of J-Pop』という番組タイトルでジャニー氏の性加害を特集。同番組には、ジャニー氏から被害を受けたという複数の男性が出演し、証言。今月12日には、ジャニーズJr.メンバーとして活動していた岡本カウアン氏が日本外国特派員協会で会見を開き、被害を告白。大手メディアが一斉に報じ、世間の知るところとなった。

 ジャニー氏の問題をめぐっては過去、元所属タレントの著書などで明かされていたが、それが広く世間に知れ渡るきっかけとなったのが、1999~2000年にかけて大々的に特集記事を展開した「週刊文春」(文藝春秋)の報道だった。これを名誉棄損だとした事務所側は、東京地裁に民事訴訟を起こしたものの、最高裁は04年2月、「(ジャニー氏の)セクハラについての記事の重要部分は真実と認定する」との判決を下したのだ(ジャニー氏が「合宿所で少年らに飲酒や喫煙をさせている」と報じた部分は名誉棄損が認められ、「文春」は計120万円の損害賠償の支払いを命じられた)。

 この「文春」裁判の結果に対し、当時のテレビ、スポーツ紙など大手メディアは沈黙を貫き報道を自粛。それから約20年の時を経て、ついに事務所側が公式に調査に乗り出したかっこうとなったが、岡本カウアン氏の会見をとっても、NHKや全国紙がその内容を報じる一方、民放テレビ局の報道・情報番組、スポーツ紙はいまだに沈黙を貫いている。

問われる経営責任

 カウアン氏が前出の会見で語った内容は衝撃的なものだった。カウアン氏は事務所に所属しジャニーズJr.として活動していた12~16年の間に、ジャニー氏から計15~20回の被害に遭った告白。以前から一部で報じられ問題視されていたジャニー氏の行為について、カウアン氏は入所前の時点では「知らなかった」という。主要メディアが報道してこなかったせいと考えられ、会見に訪れていたNHKのディレクターは「私もテレビメディア、とりわけ公共放送に勤める者の一人として大変重く受けとめています」とコメント。このNHKディレクターから「もし当時大手メディアが報じていたら、ご自身の選択は変わったと思いますか?」と問われたカウアン氏は、「もしテレビが当時取り上げていたら大問題になるはずなので、たぶん、親も行かせないと思います」と回答した。

 BBCの報道を受けて事務所は

「2019年の前代表の死去に伴う経営陣の変更を踏まえ、時代や新しい環境に即した、社会から信頼いただける透明性の高い組織体制および制度整備を重要課題と位置づけてまいりました」

というコメントを発表。その一方で取引先企業への説明のために社内調査を行っていたことが判明したわけだが、テレビ局関係者はいう。

「要は法人として責任が問われかねないステージにまできたということ。現社長の藤島メリー景子氏、現副社長の白波瀬傑氏をはじめ、文春裁判が行われていた当時に経営の中枢にいた人物が、今も数多く経営幹部として残っている。当時の事務所がジャニー氏の行為を認識しつつもそれを看過していたのだとすれば、その不作為をめぐって現経営陣の法的・企業倫理的な責任が問われるのは避けられない。

 また、これまではジャニーズ関連の事案については芸能関連のものとして全国紙や通信社などが扱う機会は少なかったが、企業経営者による社内での常態的なハラスメント行為となれば高い公共性を帯びる事案となるため、全国紙も報じることになる。関係が深いテレビ局やスポーツ紙とは違いコントロールが効かず、また、取引先企業としてもコンプライアンスの観点から同事務所との取引を見直さざるを得ない可能性も出てくるため、事務所としては『正式に調査して対応している』という姿勢を見せる必要が出てきたということ」

民事裁判での立証は可能か

 20日発売の「文春」は、同事務所のスタッフがジャニー氏によるJr.メンバーへの不適切行為に関与していたと報じているが、もし被害者が同事務所に損害賠償などを求めて法的措置を取った場合、その訴えが認められる可能性はあるのだろうか。山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士はいう。

「別裁判とはいえ、また、別のタレントに対するものとはいえ、一度はジャニー氏による『性加害』が認定されているので、このオカモトさんも自身に対する『性加害』を民事裁判で立証するのは簡単かもしれません。

 ここで、『ジャニーズ事務所(会社)』や経営陣を被告として損害賠償が認められるかどうかが問題になります。『週刊文春』の記事によると事務所のスタッフがタレントをわざわざジャニー氏に送り届けていたとのことです。もはや日本国内では『公然の秘密』ともされているジャニー氏の行為は当然スタッフも知り尽くしていたでしょうし、送り届けた後、ジャニー氏が何をするかも知り尽くしていたでしょうから、もし『スタッフがタレントを送り届ける』行為が、事務所の組織的な命令によって行われていたことをうまく立証できるのであれば、事務所や経営陣に対する損害賠償も可能となるでしょう。

 この場合、未成年に対する(現行刑法の言い方によれば)強制性交、強制わいせつという重大犯罪をほう助(ジャニー氏によるこれらの行為をしやすくした)したことになりますので、民事上の賠償金は高額となることが考えられます。『懲罰的損害賠償』という日本にはない考え方があるアメリカの例ですが、大学職員が未成年の女子体操選手などに性的暴行をした事件において、大学が550億円の賠償を支払う合意をしたといったニュースがありました。他方、日本では、ある強制性交事件(被害者は女性)の損害賠償請求訴訟(民事)において、強制性交による慰謝料として300万円、心の傷を治療するための治療費として約120万円、入院の慰謝料として130万円、合計550万円が認められた例があります。

 アメリカのようにはならなくても、裁判(民事)を担当する裁判官も、言われなくても『ジャニー氏の件』は知っているでしょうし、好意を抱くとは思えず、間違いなく嫌悪を覚えることと思われます。そして、『性被害』という事件の性質、組織的な違法行為であること、この事務所におけるジャニー氏という絶対的存在による行為であること、被害者が未成年であることなどを最大限考慮します。その結果、上記の立証が成功するのであれば、上記の日本の裁判例と比べても、一桁違う賠償金が認められてもおかしくないと考えます」

(文=Business Journal編集部/協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)

山岸純/山岸純法律事務所・弁護士

山岸純/山岸純法律事務所・弁護士

時事ネタや芸能ニュースを、法律という観点からわかりやすく解説することを目指し、日々研鑽を重ね、各種メディアで活躍している。芸能などのニュースに関して、テレビやラジオなど各種メディアに多数出演。また、企業向け労務問題、民泊ビジネス、PTA関連問題など、注目度の高いセミナーにて講師を務める。労務関連の書籍では、寄せられる質問に対する回答・解説を定期的に行っている。現在、神谷町にオフィスを構え、企業法務、交通事故問題、離婚、相続、刑事弁護など幅広い分野を扱い、特に訴訟等の紛争業務にて培った経験をさまざまな方面で活かしている。
山岸純法律事務所

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