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ヤフーのリスキリング、費用7割補助は転職が条件…「あり得ない」との批判も

文=Business Journal編集部
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LINEヤフーテックアカデミーのHPより

 LINEヤフーが事業として開始したオンラインプログラミングスクール「LINEヤフーテックアカデミー」。未経験者からITエンジニアへの転職を支援するリスキリングプログラムであり、経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」に採択されたため、受講費用55万円(税込)の税抜分の費用の7割にあたる35万円の補助を受けることができる。だが、転職することが7割の補助を受ける条件となっている点について、一部からは疑問の声もあがっている。

「LINEヤフーが持つWeb業界での実践的な技術力と、受講者3万名を超えるプログラミングスクール『テックアカデミー』を展開するキラメックス社が持つ学習支援体制により、未経験からITエンジニアになるためのスキルとノウハウを学ぶことができます」

 HP上でこのように紹介されている同サービスは、Webアプリケーション開発コースとして、Java、Spring Boot、データベース、Git/GitHub、UNIX/Linux、Webなど、ITエンジニアとして就業するための基礎的な知識を網羅的に学習するもの。専属メンターとのオンライン面談(25分×週2回)やチャットサポート(毎日15時~23時)、課題レビュー(回数無制限)を受けることができ、目安として1日あたり約3時間(1週間あたり約21時間)学習すれば16週間、約4カ月で完了する仕組みになっており、課題にすべて合格すれば学習修了証明書が発行される。

 大きな特徴として挙げられるのが、LINEヤフーが持つ実践的な技術開発ノウハウが反映されたカリキュラムを学べる点と、学習と並行してキャリアカウンセラーによるエンジニア転職へのサポートを受けられる点だ。キラメックス社の転職支援・求人紹介サービスにより、1000社以上の未経験者向け求人から転職先の案内を受けることができる。

 ちなみにテックアカデミーは独自に「エンジニア転職保証」というコースを提供しており、期間は16週間、受講費用は54万7800円となっている。テックアカデミーの「Javaコース」を受講した経験のある30代男性はいう。

「付録部分を除くと計17Lessonあり、数Lessonごとに課題が設けられ、すべての課題に合格すると修了となる。私は4週間プラン(18万5900円)を受けたが、仕事が忙しくてなかなか学習の時間が確保できず、また想像以上に各Lessonの課題が難しくて手こずったため4週間で終わらなかった。追加費用を払って延長サポートを受けて修了した。すべてオンラインで完結するし、自分の都合の良い時間に学習でき、またメンター面談やチャットもあるので、総じて評価すると便利なサービスといっていい。コースに修了しても、すぐにプログラマーとして仕事ができるほど実践的なノウハウは身につかないという声も聞かれるが、それはテックアカデミーに限らず、どんなスクールでも似たようなものだろう」

「他サービスで転職された方は対象外」

 LINEヤフーテックアカデミーでは前述のとおり最大で受講費用の7割の補助を受けることができる。具体的には、まず全額を受講者個人が支払った後、コースを修了した時点で受講料の50%(25万円)がキャッシュバックされ、さらに同コースが提供する転職支援サービスを利用して転職し同企業に1年間継続して就業すると20%(10万円)がキャッシュバックされる。つまり自己負担は、もともとの受講料の税金分5万円分を合わせた20万円で済むことになるが、補助を受ける条件として以下が設定されている。

<参加条件>
・受講開始時およびキャリア相談の開始時に企業等と雇用契約がある方
・必要な各種書類提出への協力
・当サービスが提供するキャリア相談/面談への参加
・当サービスが提供するキャリア支援サービスでの転職活動
・就職後のフォローアップに伴う個人情報を含む必要情報等の提出への協力
・お申し込みから受講開始日までにアンケート・キャリア相談を対応

<受給条件>
・補助対象となるリスキリング講座をお申し込み
・受講したコースの修了。以下の条件を全て満たしている
 ・課題をすべて提出し合格
 ・受講中にキャリアカウンセリングを規定回数の実施
 ・本人名義でのお申し込み・受講料のお支払い

 また、HP上の「注意事項」「FAQ」には

「転職&1年間同企業で就業した際の20%キャッシュバックについて、他サービスで転職された方は対象外」

「受講料金の20%については、キャリア支援サービスの利用かつ転職が必須となります」

とも記載されている。

「経産省が設けた補助金制度なので、LINEヤフーのせいではないが、転職しないとリスキングの補助金を受けられないという制度設計自体があり得ないというか荒唐無稽で、現実に即していない。今は多くの企業でIT人材が不足しているが、十分な社内教育をできずにIT人材を増やせなかったり、スキルがなくてIT関連部門へ異動できない社員が塩漬け状態になっている企業も少なくない。そうした企業で社員個人が自発的に学習できる環境を整えることが重要だ。また、多くの日本企業では思い立ったらすぐに転職をするというのが難しいのが現状であり、転職の予定があるなしにかかわらず個々人がリスキングに励むことによってITスキルを身に付けることは、将来的に見れば日本経済全体の底上げにつながる。他社に転職せずにフリーランスでITエンジニアとして働く人が増えても、それは同様だ。転職を前提とする補助というのは、政策としては近視眼的すぎる」(大手ベンダSE)

プログラマーの年収は想像以上に低い

 それでもLINEヤフーの試みは良心的だという声もある。

「結果的にコース修了後に転職をしなかったとしても、受講の申し込み時に『将来的な転職を目指している』という意思を表明すれば50%分の補助は受けられるので、そこは受講生にメリットが出るように柔軟な姿勢を取っていると感じる。25万円でこの内容のカリキュラムを学べるのも魅力的。少しでも将来的にITエンジニアへの転身を考えている人であれば、すぐに転職活動を行う予定はなくても、とりあえず半額の補助を受けて受講してみる価値は十分にある」(IT企業プログラマー)

 受講生インタビューでは、受講をきっかけに美容師からエンジニアとしてIT企業へ転職して年収が120万円アップしたケースや、営業職の派遣社員からエンジニアの正社員へ転身したケースなどが紹介されている。

「ITエンジニアの需要が高く、その傾向は当面は続くとみられており、『食いっぱくれがない職業』であることは確かだ。ただ、最近は『某社がAI人材を年収1000万円で募集』といったニュースがよくみられるが、日本では概してITエンジニアの収入は高くはなく、高度な技術を持つAIエンジニアやデータサイエンティストなどは例外として、一般的なJavaやPythonなどのプログラマーの年収は想像以上に低いと考えておいたほうがいい。プログラミングスクールを修了したからといって、すぐにプログラマーとして実践でバリバリ働けるわけではないので、異業種からの転職なら、まずは中小規模の会社に滑り込んで3年くらいは修行するつもりくらいの覚悟が必要。逆にいえば、そこでしっかりと実力をつければ、待遇の良い大手IT企業への転職の扉も開けてくる」(同)

(文=Business Journal編集部)

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